英国の求人の9.4パーセントがAIに言及し、2023年の約2パーセントから約5倍になりました。
求人サイト Indeed の調査部門が2026年8月に公表したデータで、英国の求人票のうちAIやAI関連ツールに言及するものが9.4パーセントに達したことがわかりました。2023年の約2パーセントから3年で約5倍です。一方で英国全体の求人数は2026年に入って11パーセント減り、コロナ前を32パーセント下回っています。求人が減っているのにAI求人だけが伸びる、Indeed が「二速の労働市場」と呼ぶ状態です。不動産業は知識労働と現地対応が同じ会社の中に同居する業種なので、この分岐は他業種より早く社内に現れると考えています。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が解説します。

何が起きたか:AI言及率9.4パーセントと、逆向きに動く2つの指標
今回のデータで注目すべきは、AI求人の伸び率そのものではなく、全体求人とAI求人が逆方向に動いている点です。The Decoder が伝えた Indeed Hiring Lab の分析によれば、2026年6月末時点で英国の全求人の9.4パーセントがAIまたは関連ツールに言及していました。
職種別の内訳は明確に分かれています。データ・アナリティクスが48.8パーセント、ソフトウェア開発が46.7パーセントと、およそ半数の求人がAIに触れています。ここまでは想像どおりですが、注目すべきはその外側です。ITシステムが30.7パーセント、科学研究開発が28.1パーセント、マーケティングが26.2パーセント、メディア・コミュニケーションが22.4パーセント、銀行・金融が16.9パーセントと、技術職以外にも広く染み出しています。反対に、現地にいることが前提の職種、つまり美容・介護・清掃・運転などはいずれも1パーセント未満でした。
そして最も鋭い分岐が起きているのが、人事、経理、管理職、マーケティング、プロジェクト管理、銀行・金融です。マーケティングではAI求人の指数が341まで伸びる一方、求人全体の指数は52まで落ちています。管理職も344対78と同じ形です。同じ職種の中で、AIを条件に含む求人だけが増え、それ以外が消えている状態だといえます。
働く側の動きも同じ方向です。Indeed によれば、AI関連職の検索数はChatGPT公開以降で7倍に増えました。「AI」と組み合わせて検索される語の上位は「エンジニア」が6.4パーセント、次いで「トレーナー」が5.6パーセントです。一方で新卒向け求人はパンデミック以降で最も低い季節水準にあり、若年層の失業率は10年以上で最も高い水準になっています。
日本の不動産事業者にとっての3つの論点
第一に、不動産会社は英国データの「両極」を1社の中に抱えているという点です。追客メール、広告原稿、賃貸管理の一次対応、契約書類のチェックといった業務は、英国でAI言及率が20パーセントを超えた知識労働の領域と性質が同じです。他方で内見の立ち会い、現地調査、退去立ち会い、重要事項説明といった業務は、AI言及率1パーセント未満だった現地職と同じ性質を持ちます。つまり社内で二速化が同時進行します。全社一律の「AI研修」で足並みを揃えようとすると、どちらの層にも刺さらない結果になりがちです。
第二に、求人票そのものが競争条件になり始めているという点です。英国では9.4パーセントの求人がすでにAIに言及していますが、日本の不動産会社の求人票でAIツール名まで書かれている例はまだ多くない印象です(要確認)。裏を返せば、先に書いた会社が「AIを使いこなす人が集まる会社」という位置を取れる余地が残っています。抽象的に「DX推進」と書くのではなく、実際に社内で使っているツール名と、その担当者が何を任されるのかを具体的に書くほうが効きます。
第三に、採用で獲るのか、育てて充てるのかという判断です。英国データが示しているのは、企業が「今日からAIツールを回せる人」を求めているという事実です。この層は当然、報酬が上がります。地域密着の中小不動産会社が同じ土俵で採用競争に入るのは現実的ではありません。むしろ検索語の2位が「トレーナー」だったことのほうが示唆的で、既存社員をAIが使える状態に引き上げる役割そのものに需要が生まれています。社内に1人トレーナー役を置くほうが、採用単価より安く済むケースが多いと見ています。中小規模での進め方は不動産の中小企業がAIを30日で導入する手順でも整理しています。
初動として何をすべきか
まず、職種と業務の棚卸しです。自社の業務を「AIで置き換えが進む知識労働」と「現地にいることが価値の労働」に分け、後者に人を厚く残す前提で採用計画を組み直します。棚卸しは1日あればでき、費用もかかりません。
次に、求人票の書き換えです。使っているAIツール名、その業務での使い方、入社後に任せる範囲を具体的に書きます。英国では9.4パーセントが到達している水準なので、日本でも早晩当たり前になります。研修や導入支援の枠組みをどう選ぶかは不動産向けAI導入プログラムの選び方を参考にしてください。
そして、社内トレーナー役の設置です。外部研修を単発で入れるより、日々の業務の中で質問を受けられる人を1人決めるほうが定着します。導入時に使える公的支援については宅建業者のAI導入で使える補助金の手順にまとめています。
最後に、資格と責任の線引きです。宅地建物取引士でなければできない業務、たとえば重要事項の説明や記名は、AIの習熟度とは無関係に有資格者に残ります。AI活用を採用要件に加える際も、宅建業法上の体制要件を満たす人員計画とは別の軸として管理してください。
まとめ
英国のデータは、AIが仕事を奪ったかどうかではなく、同じ職種の中で求人が二つに割れ始めたことを示しています。不動産業は知識労働と現地労働を1社で抱えるため、この分岐が社内に持ち込まれます。いま必要なのはAI人材の採用ではなく、自社のどの業務がどちら側なのかを先に決めておくことです。
参考文献
- UK’s job market is splitting in two as AI demand surges while knowledge work postings crater(The Decoder)
- AI in Job Postings(Indeed Hiring Lab UK)
- Mid-Year UK Jobs & Hiring Trends Report(Indeed Hiring Lab UK)
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)