ElevenLabsは2026年9月11日、AI音楽モデル「Music v2.5」を全プランに公開しました。
本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が解説します。今回の発表で注目すべきは性能ではなく権利条件のほうです。無料プランでも1日5曲までロスレス音源を書き出せ、ElevenMusicのクレジットを表示すれば商用利用が認められます。内見動画やInstagramリールのBGMを、外部の音源サイトに月額を払わずに内製できる道が開いたことになります。ただし不動産の動画は広告物である以上、音源の権利処理を曖昧にしたまま運用すると後戻りが効きません。本記事では事実関係を整理したうえで、賃貸仲介・売買仲介がAI音楽を業務に入れる際の3つの条件を提示します。

Music v2.5で何が変わったか、権利条件とスペックの事実
結論から言えば、今回の変更点は「音質の向上」と「無料枠へのロスレス開放」の2点です。ElevenLabsの公式発表によると、Music v2.5はプロンプト生成とリファレンス生成の双方でElevenMusicの標準モデルになりました。同社は同じプロンプトで新旧2モデルの音源を作って比較する盲検テストを47,885ペア実施し、過半数でv2.5が選ばれたと説明しています。差が大きかったのはボーカル主体の曲と、R&B、ソウル、ヒップホップ、ロック、メタル、オーケストラ、シネマティックといったアコースティック寄りのジャンルでした。
権利面の条件は公式発表に明記されています。無料プランでは1日5曲のロスレスダウンロードが可能で、ElevenMusicのクレジットを表示することを条件に商用利用できます。Proプランは月400曲のロスレスダウンロードが上限です。作成時点で適用された利用条件はその曲にそのまま残り、解約やプラン変更をしても既に作った曲の扱いは変わらないとされています。逆に、他のアーティストの楽曲を参照して作られたトラックはダウンロードがブロックされます。
技術仕様はEleven Musicの公式ドキュメントに整理されています。生成できる長さは3秒から5分、書き出しはMP3(44.1kHz、128〜192kbps)とWAVです。APIではmodel_id="music_v2_5"を指定して呼び出します。日本語を含む多言語のボーカルに対応し、既存曲の一部だけを作り直すインペインティングや、30秒程度の参考音源で作風を寄せるAudio Referenceも使えます。ただしAudio Referenceは有料プラン限定で、アップロードした音源は著作権チェックを通過しないと使用できません。商用利用の範囲はプランごとに異なるため、実務で使う前にElevenLabsの音楽利用規約を読むことをおすすめします。
日本の不動産事業者にとっての論点はBGMの権利処理コスト
日本の賃貸仲介・売買仲介にとって、この発表が刺さるのはBGM調達の構造が変わるからです。物件紹介動画や内見動画、Instagramリール、TikTokの短尺動画は、いまや多くの店舗が自社で撮って自社で編集しています。撮影と編集は内製できても、BGMだけは月額制の音源サイトに依存し続けている店舗が少なくありません。
BGM調達が厄介なのは、音楽には2種類の権利が重なっているためです。JASRACの解説にあるとおり、市販のCDや配信音源を動画に使う場合は、作詞・作曲に関する著作権とは別に、録音物に関する著作隣接権(原盤権)の許諾をレコード会社などから個別に得る必要があります。JASRACと利用許諾契約を結んでいる動画投稿サービスに個人がアップロードするだけなら手続きが不要な範囲もありますが、不動産の物件動画は集客を目的とした広告物です。自社サイトへの埋め込み、ポータルサイトへの入稿、店頭サイネージでの再生、広告配信への転用と、利用先が増えるほど許諾の範囲から外れるリスクが高まります。
AI生成音源は、この権利の二層構造そのものを回避できる点に価値があります。自分のアカウントで生成した曲は、規約の範囲内であれば動画の使い回し先が増えても権利処理をやり直す必要がありません。物件動画は「掲載中だけ公開して、成約したら非公開にする」という短命なコンテンツです。1本あたり30秒から2分のBGMを、月に数十本ぶん調達する用途では、無料枠の1日5曲でも現実的な供給量になります。
一方で、AI音楽の周辺は法的にまだ動いています。当メディアでもソニーとワーナーによるAnthropicへの提訴やAI学習と著作権をめぐる和解を取り上げてきました。ElevenLabsはレーベルやパブリッシャー、アーティストと協働してモデルを作ったと説明しており、発表では別件としてユニバーサル ミュージック グループとの複数年契約にも触れています。とはいえ、AI音楽全般の権利環境が今後どう動くかは要確認の領域です。
実務で入れる際の3条件と初動アクション
不動産事業者がAI音楽を業務に組み込むなら、次の3条件を先に決めておくことをおすすめします。
第1に、クレジット表記の運用を先に固めることです。無料プランで商用利用するにはElevenMusicのクレジット表示が条件になります。動画の末尾テロップに入れるのか、投稿キャプションの定型文に入れるのかを決め、編集テンプレートに組み込んでおけば、担当者が変わっても抜けません。表記が面倒でテロップを削るくらいなら、有料プランに切り替えて条件を確認したほうが安全です。
第2に、参考音源を使わない運用を標準にすることです。Audio Referenceは便利ですが、既存のヒット曲に寄せようとした瞬間に、そのトラックはダウンロードがブロックされる仕組みになっています。「あの曲っぽくして」という指示は現場で出がちなので、テキストプロンプトだけで作る運用をルール化しておくほうが事故が起きません。プロンプトは「築古アパートの内見動画向け、明るいアコースティックギター、ボーカルなし、60秒、落ち着いたテンポ」のように、用途・楽器・尺・ボーカル有無を指定する形が扱いやすいです。
第3に、生成した音源を資産として管理することです。物件ごとに毎回作り直すのではなく、ファミリー向け、単身向け、投資用、戸建てといった訴求軸ごとに数曲ずつ作って社内ライブラリにしておくと、編集時間が縮みます。作成時点の利用条件がその曲に残る仕様なので、いつ・どのプランで作ったかを台帳に残しておくと、後から利用範囲を検証できます。
初動としては、まず無料プランで自社の主力動画フォーマットに合う曲を数本作り、既存のBGMと差し替えて社内で比較してみるのが現実的です。そのうえで、既に月額を払っている音源サイトの契約内容と照らし、どこまで置き換えられるかを見極めます。動画の台本づくりを自動化したい場合は内見動画のAIスクリプト自動生成、リールの量産フローは不動産のInstagramリールをAIで量産で整理しています。BGM内製はこれらの工程の最後の1ピースという位置づけになります。
まとめ
Music v2.5の実務上の意味は、音質よりも「無料枠でもロスレス音源を商用利用できる」という条件面にあります。不動産の物件動画は掲載期間が短く本数が多いため、BGMの権利処理コストが積み上がりやすい領域です。クレジット表記、参考音源を使わない運用、社内ライブラリ化の3点を先に決めたうえで、小さく試すのが妥当な入り方です。
参考文献
- ElevenLabs|Introducing Music v2.5, our best music model yet
- ElevenLabs Documentation|Eleven Music
- ElevenLabs|Music Terms
- JASRAC|YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用
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引用元: ElevenLabs
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)