内見動画のAIスクリプト自動生成|賃貸仲介で使えるプロンプト7本

内見動画の台本づくりをAIに任せる手順です。回遊型・訴求型・ショート型の使い分け、スクリプト生成プロンプト7本、表示規約に触れない点検の型、費用と工数の目安を賃貸仲介向けに解説します。

デスクでノートPCを囲んで書類を確認する2人

内見動画AIスクリプトとは、物件案内動画の台本をAIで作ることです。

物件を1件撮るのに、現地で15分、編集で30分、原稿を考えるのにさらに20分。賃貸仲介の現場で動画が続かない理由の大半は、この「原稿を考える20分」にあります。撮影と編集はスマートフォン1台で完結するようになりましたが、何を、どの順で、何秒しゃべるかを決める工程だけは自動化されずに残りました。ここを生成AIに寄せると、1件あたりの制作時間は半分近くまで落ちます。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入支援100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が、賃貸仲介の内見動画スクリプトをAIで量産する手順を、不動産の表示に関する公正競争規約に触れない書き方とセットでまとめます。

扱うのは、ポータルサイトに載せる物件紹介動画、SNSに流すショート動画、そして遠隔の入居希望者へ個別に送る案内動画の3種類です。プロンプトは7本、いずれも独立して使えます。

撮って出しの動画が回らなくなった理由

動画が増えたのに成約が動かない、という相談が増えています。原因は本数ではなく、台本の不在です。

賃貸仲介の動画には、写真では伝わらない情報を補うという明確な役割があります。玄関から居室までの動線、水回りの実際の広さ、窓を開けたときの音、共用部の管理状態。これらは静止画では伝わりません。ところが台本なしで撮ると、撮影者が「見せたいもの」から順に映してしまい、視聴者が「知りたいもの」の順にならない。結果として、最後まで見られずに離脱します。

もう1つの問題は、担当者ごとに品質が揃わないことです。ベテランは入居希望者が気にする点を体で覚えているので、無言でも要点を押さえた動画になります。入社1年目はそうはいきません。同じ物件を撮っても、片方は問い合わせが来て、片方は来ない。この差は個人の資質ではなく、台本という形で言語化されていないことに起因します。

生成AIをここに入れる意味は、演出の巧拙を平準化することにあります。物件の条件を渡せば、見せる順序と話す内容の骨格が数十秒で出てきます。撮影者は骨格に沿って撮るだけでよく、判断の負荷が下がる。直近の支援案件で観測したのは、台本を先に作る運用へ変えただけで、撮影のやり直しが目に見えて減ったという変化でした。撮り直しが減れば、1件あたりの現地滞在時間も短くなります。

もう1点、2026年に入って条件が変わったのがコスト面です。Gemini 3.6 Flash は入力100万トークンあたり1.5米ドル、出力100万トークンあたり7.5米ドルという価格帯にあり、前世代より出力トークンを17%削減しています。台本1本の生成に必要なトークン量はごくわずかなので、100件分作っても数十円規模に収まる計算です。件数を絞る理由が、費用面ではほぼ消えました。

物件情報そのものの構造化を先に済ませておくと、台本生成はさらに速くなります。マイソクやCSVから条件を機械的に取り出す手順は、Gemini 3.6 Flashでの物件情報一括処理にまとめました。構造化されたデータがあれば、台本生成のプロンプトに貼り付ける作業も転記ミスもなくなります。同じ考え方で静止画のキャプションを整える方法は、生成AIによる物件写真のキャプション自動生成で扱いました。動画と写真で訴求の言い回しをそろえておくと、掲載面をまたいだときの印象が安定します。

視聴者側の変化にも触れておきます。遠隔地からの申し込みや、内見前に候補を2〜3件に絞りたいという相談は、コロナ禍を挟んで定着しました。現地に行く回数を減らしたい入居希望者にとって、動画は間取り図と写真の間を埋める情報源です。ここで求められているのは演出された美しい映像ではなく、実際に住んだときの状態が想像できる情報です。天井高、収納の奥行き、コンセントの位置、エアコンの有無と設置場所。台本にこれらを織り込むだけで、問い合わせ時の質問が減り、内見の成約率が上がる方向に働きます。

台本を3つの型に分ける

結論として、台本は「回遊型」「訴求型」「ショート型」の3つに分けます。用途が違うので、構成も尺も別物になります。

回遊型は、ポータルサイトや自社サイトに載せる標準の物件紹介動画です。尺は90秒から120秒。構成は、外観と立地の説明から入り、エントランス、共用部、玄関、居室、水回り、収納、バルコニーの順に進みます。視聴者は間取り図を見ながら動画を再生することが多いため、間取り図をなぞる順序と動画の順序を一致させると理解が早くなります。この型では、担当者の顔出しは不要です。声と映像だけで完結させたほうが、複数物件を続けて見る視聴者にとって負担が軽い。

訴求型は、特定の入居層に狙いを定めた動画です。尺は60秒前後。全部屋を万遍なく映すのではなく、その層が気にする点を3つに絞ります。単身の社会人であれば、駅からの実際の道のり、洗濯機置き場のサイズ、宅配ボックスの有無。ファミリー層であれば、小学校までの経路、リビングの日照時間、収納の総量。ペット可物件であれば、床材と傷への対応、共用部のルール。訴求点を3つに絞ると、動画は自然に短くなります。

ショート型は、SNS向けの15秒から30秒です。冒頭2秒で結論を出し、残りで根拠を見せます。「駅徒歩4分でこの家賃」「1階が全部収納」のように、1本1メッセージに割り切る。ここで複数の訴求を詰め込むと、どれも残りません。SNSからの流入をどう記事や物件ページにつなぐかは、AI集客と不動産SEOの設計で扱った考え方がそのまま使えます。

3つの型を使い分ける基準は単純です。物件ページに常設するなら回遊型、反響が鈍い物件のてこ入れなら訴求型、新規の認知を取りに行くならショート型。同じ物件で3本作る必要はなく、まず回遊型を全物件に、訴求型を空室期間が30日を超えた物件に、ショート型を月に数本という配分が現実的です。

台本の粒度についても決めておきます。秒数、映すもの、話す内容の3つを1行にまとめた形式が扱いやすい。「0:00-0:08 / 外観を下から上へ / 築年と構造、最寄駅と徒歩分」のような書き方です。撮影者はこの行を見ながら撮るだけで済みます。ナレーションを読み上げる場合も、この形式なら1行ずつ収録できます。

ナレーションを入れるかどうかも、型ごとに決めておくと迷いません。回遊型は音声ありが有利です。間取り図と照らし合わせながら見る視聴者にとって、いま映っているのがどの部屋かを言葉で示されると理解が速くなります。ショート型は逆で、音声なしで再生される前提に立ちます。テロップだけで意味が通る構成にしておかないと、無音のまま流し見されて何も残りません。訴求型はどちらでも成立しますが、送付先が個人であれば担当者の声が入っているほうが反応が良い傾向にあります。

尺の配分も型ごとに固定しておきます。回遊型90秒であれば、外観と立地に12秒、共用部に10秒、玄関に8秒、居室に25秒、水回りに20秒、収納に8秒、バルコニーと締めに7秒。居室と水回りで全体の半分を使う配分です。この比率を毎回同じにしておくと、視聴データを比べたときに「どの物件のどの部分が弱いか」を判断できます。物件ごとに構成を変えてしまうと、離脱率の差が構成の差なのか物件の差なのか分からなくなります。

配分を固定したうえで、例外を1つだけ許容します。その物件の最大の訴求点が水回り以外にある場合、その部分に10秒を上乗せし、他から削る。たとえば角部屋で窓が3面ある物件なら居室に、ルーフバルコニー付きなら屋外に配分を寄せます。例外を1つに限ることで、テンプレートとしての比較可能性は保てます。

台本生成プロンプト7本

ここから実装に入ります。プロンプトは7本、それぞれ独立したコードブロックにしてあります。中括弧の変数を自社の情報に置き換えて使ってください。使うモデルは、台本生成であれば中位帯で十分です。Claude でも ChatGPT でも Gemini でも、出力の差はほとんど出ません。

プロンプト1は回遊型の基本形です。物件条件から90秒の台本を作ります。

プロンプト1:回遊型の内見動画スクリプト(90秒)

あなたは賃貸仲介の物件紹介動画を制作するディレクターです。
以下の物件について、90秒の内見動画スクリプトを作成してください。

出力形式:
「秒数レンジ / 映すもの / ナレーション原稿」を1行1カットで、表ではなく行として出力する

構成の順序:
外観と立地 → エントランスと共用部 → 玄関 → 居室 → 水回り → 収納 → バルコニー → まとめ

条件:
1. ナレーションは1カットあたり20〜45字。読み上げ速度は1秒あたり6字で計算する
2. 物件情報にない事柄を推測で足さない
3. 断定的な将来予測(資産価値が上がる、値上がりする等)を書かない
4. 「必ず」「確実」「保証」「業界No.1」などの断定・最上級表現を使わない
5. 徒歩分数は与えられた数値をそのまま使い、独自に計算し直さない
6. 最後のカットで、問い合わせへの誘導を1文入れる

物件情報:
{物件名 / 所在地 / 最寄駅と徒歩分 / 賃料 / 管理費 / 間取り / 専有面積 / 築年月 / 構造 / 階数 / 主な設備 / 周辺環境}

プロンプト2は訴求型です。入居層を指定して、訴求点を3つに絞らせます。

プロンプト2:訴求型スクリプト(60秒・ターゲット指定)

あなたは賃貸仲介のマーケティング担当です。
以下の物件を、指定したターゲット層に向けた60秒の動画スクリプトに落としてください。

手順:
1. 物件情報から、そのターゲット層が最も気にすると考えられる点を3つ挙げる
2. 3つそれぞれについて、映像で示せる形に変換する
3. 60秒のカット割りとナレーションを作る

条件:
- 訴求点は3つに限定し、それ以外は触れない
- 各訴求点の冒頭で、結論を先に述べる
- 物件情報にない事柄を推測で足さない
- 断定・最上級表現、および将来の価値に関する断定を書かない

ターゲット層:{単身社会人 / 学生 / DINKS / ファミリー / シニア / ペット飼育}
物件情報:
{物件情報}

プロンプト3はショート型です。冒頭2秒のフックを複数案出させます。

プロンプト3:ショート動画スクリプト(20秒・フック5案)

あなたはSNS動画の構成作家です。
以下の物件について、20秒のショート動画スクリプトを作成してください。

出力:
1. 冒頭2秒のフック(テロップ文言)を5案。各案15字以内
2. 5案のうち最も反応が見込めると考える案を1つ選び、理由を1文で述べる
3. 選んだ案に続く18秒分のカット割りとテロップ文言

条件:
- 1本につき伝えるメッセージは1つに絞る
- 誇張表現、断定的な将来予測、最上級表現を使わない
- 物件を特定できる情報(部屋番号、表札、近隣の看板)が映る指示を出さない
- 音声なしで視聴されることを前提に、テロップだけで意味が通る構成にする

物件情報:
{物件情報}

プロンプト4は、既存の台本を表示規約の観点で点検するものです。制作後のチェックに使います。

プロンプト4:表示規約・景表法の観点でのスクリプト点検

あなたは不動産広告の表示ルールに詳しい審査担当です。
以下の動画スクリプトを点検し、修正が要る箇所を一覧化してください。

観点:
1. 「新築」「リフォーム済」「即入居可」などの用語が、定義どおりに使われているか
2. 徒歩分数、面積、築年数などの数値が、物件情報と一致しているか
3. 「最高」「日本一」「業界No.1」「絶対」などの最上級・断定表現がないか
4. 「必ず空室にならない」「資産価値が上がる」などの将来予測の断定がないか
5. 物件の欠点に触れずに優良性のみを強調し、誤認を招く構成になっていないか
6. 実際には取引できない物件をあたかも取引できるように見せる表現がないか

出力:
- 該当箇所の引用(20字以内)、懸念、修正案の3点をセットで書く
- 判断に迷うものは「要確認」と明記し、断定しない

スクリプト:
{スクリプト本文}
物件情報:
{物件情報}

プロンプト5は、撮影者向けの指示書を作るものです。台本から現地でのチェックリストへ変換します。

プロンプト5:撮影指示書への変換

以下の動画スクリプトを、現地で使う撮影指示書に変換してください。

出力形式:
1. 持ち物リスト(撮影機材、鍵、メジャーなど)
2. カットごとの撮影指示(立ち位置、カメラの高さ、動かし方、明るさの注意点)
3. 撮り忘れ防止チェックリスト(カット番号と対象のみの短い一覧)
4. 撮ってはいけないものの一覧(表札、郵便受けの氏名、近隣住戸の内部、他人の車のナンバーなど)

条件:
- 現地で片手で読める分量にする
- 専門用語を使わず、入社1年目が読んで分かる表現にする

スクリプト:
{スクリプト本文}

プロンプト6は、同じ台本から個別送信用の案内文を作るものです。遠隔の入居希望者に動画を送る場面で使います。

プロンプト6:動画送付メッセージの生成

あなたは賃貸仲介の営業担当です。
以下の内見動画を、遠隔で検討中のお客様に送るためのメッセージを3案作成してください。

条件:
1. 各案180〜240字
2. 動画で確認できる点を2つ挙げ、動画では分からない点を1つ正直に添える
3. 次のアクション(来店、現地待ち合わせ、オンライン面談)を1つだけ提案する
4. 断定的な将来予測、最上級表現、過度な急かし表現を使わない
5. 3案は、丁寧度と文の長さをそれぞれ変える

お客様の状況:{問い合わせ経緯、希望条件、検討度合い}
動画の内容:{スクリプトの要約}

プロンプト7は、公開後の改善に使います。視聴データから次の台本へ反映する観点を出させます。

プロンプト7:視聴データからの台本改善

以下は、内見動画の視聴データと台本です。
次に同種の物件を撮るときの改善案を出してください。

出力:
1. 離脱が集中している時間帯と、その時点のカット内容の対応
2. 離脱の要因として考えられる仮説を3つ、確度の高い順に
3. 次回の台本で試す変更を3つ、それぞれ検証方法とセットで
4. 変更しないほうがよい部分と、その理由

条件:
- データから読み取れない事柄は「推測」と明記する
- 1本のデータだけで一般化しない旨を添える

視聴データ:{総再生数 / 平均視聴時間 / 秒ごとの離脱率 / 問い合わせ件数}
台本:{スクリプト本文}

7本の使い分けは、制作の流れに沿っています。台本を作る(1〜3)、点検する(4)、撮る(5)、届ける(6)、改善する(7)。最初から7本すべてを回す必要はなく、プロンプト1と4の2本だけでも運用は始まります。

表示規約と宅建業法で踏んではいけない線

動画は文字広告より軽く扱われがちですが、広告である以上は同じルールが適用されます。押さえるべきは4点です。

第一に、不動産の表示に関する公正競争規約の用語定義に沿うことです。徒歩所要時間は道路距離80メートルにつき1分として算出し、端数は切り上げます。「新築」は建築後1年未満かつ未入居のものを指します。動画のナレーションでこれらの語を使う場合、定義から外れた使い方をすると不当表示になり得ます。台本をAIに書かせると、口語的な言い換えで定義から外れることがあるため、プロンプト4の点検を挟んでください。

第二に、おとり広告に当たる運用を避けることです。すでに成約済みの物件の動画を残したまま集客に使うと、取引できない物件で誘引したことになります。動画は物件ページと違って削除の手が回りにくいので、成約時に動画を非公開にする手順を運用に組み込んでおきます。SNSに投稿した分についても同様です。

第三に、断定的判断の提供を避けることです。宅地建物取引業法では、契約の判断に重要な影響を及ぼす事項について断定的判断を提供することが禁じられています。「このエリアは今後値上がりします」「投資として堅いです」といった発言は、動画の中であっても対象になります。AIが生成した原稿にこの種の表現が混じることはあるので、点検は人が行ってください。

第四に、映り込みへの配慮です。表札、郵便受けの氏名、駐車場のナンバープレート、近隣住戸の窓の内部。これらが映ると個人情報や肖像に関わる問題になります。撮影指示書に「撮ってはいけないもの」を明記しておくのが、事後の編集より確実に安く済みます。

補足として、AI生成の映像素材を物件紹介に使うことは避けてください。家具のない部屋にAIで家具を合成する、いわゆるバーチャルステージングを行う場合は、加工済みである旨を明示するのが実務上の扱いになっています。実在しない設備や眺望を生成して掲載すれば、不当表示に直結します。本記事で扱っているのは、あくまで実写の動画に添える台本の自動生成です。

失敗例3つと回避策

現場で見る失敗は3つに集約されます。

1つ目は、台本を作りすぎて撮影が追いつかない状態です。生成は数十秒で終わるので、100件分の台本が一晩でできてしまいます。撮影は1日に回れる件数で頭打ちになるため、台本だけが積み上がる。回避策は、撮影の枠を先に押さえてから、その枠の分だけ台本を作ることです。逆順にすると、使われない台本が残ります。

2つ目は、AIの原稿をそのまま読み上げてしまい、文語調で耳に残らない動画になることです。生成された文章は目で読む前提の整った日本語になりがちで、音声にすると硬く聞こえます。回避策は、プロンプトで「話し言葉」「1文40字以内」「体言止めを混ぜる」と明示すること。それでも硬い場合は、収録前に担当者が声に出して1度読み、引っかかった箇所だけ直します。

3つ目は、点検工程を飛ばすことです。台本の生成が速いぶん、そのまま撮影へ進みたくなります。表示規約に触れる表現が混じったまま公開されると、修正は動画の撮り直しになります。文字の広告と違い、動画は部分修正が効きません。プロンプト4の点検は、撮影前に通す工程として固定してください。この1工程を挟むかどうかで、後戻りの量が変わります。

補足すると、失敗の芽は運用の担当分担にも潜んでいます。台本生成を営業担当が個々に行うと、プロンプトが人ごとに書き換わり、出力の型が揃わなくなります。生成は1人か2人に集約し、撮影は各担当が行う分担にすると、品質のばらつきが抑えられます。プロンプトは共有ドキュメントに置き、変更履歴を残す。この程度の管理で十分です。

もう1つ、動画のファイル管理も先に決めてください。物件管理番号を含むファイル名の規則を作り、台本のテキストと同じフォルダに置く。成約時に一括で非公開処理をするとき、この対応関係がないと探す作業が発生します。賃貸仲介は入退去の回転が速いので、管理のルールがない状態で本数を増やすと、あとから収拾がつかなくなります。

KPIと費用・工数の目安

測る指標は4つです。1件あたりの制作時間、平均視聴時間、視聴完了率、そして動画経由の問い合わせ件数。

制作時間は、導入前の実測と比べます。原稿作成に20分かかっていた工程が、生成と点検で5分前後に収まれば、1件あたり15分の短縮です。月に40件撮る事業者であれば、月10時間の削減になります。

視聴データは、掲載先によって取得できる粒度が違います。自社サイトに埋め込む場合は秒ごとの離脱率まで取れますが、ポータルサイト経由では総再生数しか見えないこともあります。取れる範囲で構いません。回遊型で平均視聴時間が全体の6割を超えていれば、構成は機能していると判断できます。

費用面では、台本生成にかかるAPI利用料は月40件規模で数十円から数百円の水準です。個人向けの上位プランを使う場合は月額20米ドル前後が基準になりますが、金額は改定されるため各社の料金ページで確認してください(2026年8月時点、要確認)。撮影と編集を外注する場合の相場は地域と尺で幅があるため、自社での見積もり取得が前提になります。

工数の目安は、3つの型のテンプレートを作るのに半日、プロンプト7本を自社の物件で試すのに半日、撮影指示書の様式を整えるのに2時間。合わせて1日半で運用の型が決まります。あとは撮影の枠をどれだけ確保できるかという、AIとは別の問題に移ります。

問い合わせ件数を指標に入れる場合は、帰属の取り方を先に決めてください。動画を見た人がそのまま問い合わせフォームへ進む経路であれば計測できますが、動画を見てから後日に電話で問い合わせる経路は追えません。反響の受付時に「何をご覧になりましたか」を1問だけ聞く運用を足すと、ある程度は補えます。完全な計測をあきらめて、比較可能な範囲で見ると割り切るほうが運用は続きます。

改善のサイクルは、月に1回で十分です。週次で回すと母数が足りず、離脱率の差が偶然の範囲を出ません。1か月分の動画をまとめてプロンプト7に通し、次月の台本テンプレートに反映する。この頻度なら、テンプレートの改訂履歴も追いやすくなります。

今後の展望

向こう半年で効いてきそうな変化を2つ挙げます。

1つは、映像そのものの解析です。撮影済みの動画をAIに読ませ、映っている設備や状態から台本を逆生成するアプローチが現実的になりつつあります。先に撮って後から台本を当てる順序が可能になれば、現地での判断負荷はさらに下がります。ただし、映像から読み取った内容をそのまま広告表示に使うと、誤認の元になります。事実確認は人が行う前提は変わりません。

もう1つは、個別最適化です。同じ物件でも、問い合わせてきた人の希望条件に合わせて台本を組み替え、その人向けの動画を出し分ける運用が技術的には可能になっています。プロンプト6の延長線上にある使い方です。ここで注意すべきは、個人情報の取り扱いです。希望条件や検討状況をAIに渡す際は、利用目的の範囲と入力可能な範囲を社内で定義してから運用してください。

台本という中間成果物を残す運用を作っておくと、こうした変化が来たときに乗り換えが速くなります。頭の中にある案内の型を、テキストとして社外に出せる形にしておくこと。これが動画に限らず、賃貸仲介の業務をAIに載せるための共通の下地になります。

よくある質問

内見動画の台本はAIに丸ごと任せてよいですか

いいえ、生成された台本は下書きとして扱い、表示規約と物件情報の突き合わせは人が行ってください。徒歩分数や築年数などの数値、「新築」「リフォーム済」といった用語の使い方は、AIが定義から外れた表現を出すことがあります。点検工程を撮影前に固定するのが実務上の前提です。

どのAIモデルを使えばよいですか

台本生成であれば中位帯のモデルで足ります。ChatGPT、Claude、Geminiのいずれでも出力の質に大きな差は出ません。件数が月に数百本を超える段階で、Gemini 3.6 Flashのような低価格帯をAPIで使う構成に切り替えると費用が下がります。

動画は1物件につき何本作るべきですか

まずは回遊型を1本です。空室期間が30日を超えた物件に訴求型を追加し、認知目的のショート型は月数本にとどめる配分が現実的です。同じ物件で3本作る必要はなく、本数より台本の型が揃っているかどうかが成果を左右します。

AIで家具を合成した映像を使ってもよいですか

加工した映像を使う場合は、加工済みである旨を明示してください。実在しない設備や眺望を生成して掲載すると、不当表示に当たり得ます。本記事で扱う自動生成は、実写映像に添える台本の作成に限定しています。

撮影も編集も自社でやる必要がありますか

台本作成と撮影を自社で行い、編集だけ外注する構成が始めやすいやり方です。台本があれば編集の指示が明確になるため、外注時のやり取りが減ります。撮影を外注すると台本と現場のずれが起きやすく、修正の手間が増える傾向があります。

成約した物件の動画はどうすればよいですか

成約時点で非公開にしてください。掲載を続けると、取引できない物件で誘引したことになり、おとり広告に該当し得ます。物件ページの取り下げ手順に、動画とSNS投稿の非公開処理を1行足しておくのが確実です。

まとめ

内見動画が続かない原因は撮影や編集ではなく、台本を作る工程が言語化されていないことにあります。回遊型・訴求型・ショート型の3つに分け、プロンプト7本で生成から点検、撮影指示、送付、改善までを一続きにする。表示規約の点検を撮影前の固定工程として置けば、後戻りは大きく減ります。台本という中間成果物を残す運用が、次の技術変化への備えにもなります。


著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/EC支援19年5,000社超/AIコンサル100社超/宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)


参考文献

※不動産のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社の不動産事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://fudosannochikara.jp/contact/


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)