最上位AIの利用は企業支出の11.4%、不動産のAI予算3つの基準

最上位AIモデルの利用はAnthropic向け企業支出の11.4%にとどまりました。Rampの集計をもとに、不動産事業者がAI予算を決めるときの3つの基準と、明日からの初動を解説します。

最上位AIの利用は企業支出の11.4%、不動産のAI予算3つの基準

最上位AIモデルの利用は、Anthropic向け企業支出の11.4%でした。

法人カード・支出管理を手がけるRampの集計をTHE DECODERが2026年8月13日に報じました。市場で最も高性能とされるモデルが、実際の企業支出ではほとんど使われていないという内容です。AI予算をどこに置くかを考えている不動産事業者にとって、これは「最上位モデルを選べば正解」という前提を見直す材料になります。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が解説します。

Anthropicモデルへの企業支出に占めるFable 5の割合を示すRampのグラフ

何が起きたか:最上位モデルはトークンの約6%しか使われていない

結論から書くと、性能で最上位に位置づけられるモデルほど、企業の実利用では選ばれていませんでした。Rampの集計によれば、Anthropicの最上位モデルであるFable 5は、公開後1か月でAnthropicから購入されたトークンの約6%を占めるにとどまりました。支出ベースで見ても11.4%です。

比較対象として挙げられているOpenAIのGPT-5.6 Solは、OpenAI内でトークンの25%、支出の23%を占めています。金額に直すと、Fable 5がもたらしたモデル関連の売上は、GPT-5.6 Solのおよそ75%でした。1トークンあたりの単価は上位モデルのほうが高いにもかかわらず、総額では下回っている計算になります。

価格の差ははっきりしています。Fable 5は入力100万トークンあたり約10ドル、出力100万トークンあたり約50ドルで、GPT-5.6 Solや同じAnthropicの他のフラッグシップ機のおよそ2倍の水準です。Rampのエコノミストであるアラ・ハラジアンは、この価格差が採用の伸び悩みにつながっていると分析し、企業が支払ってもよいと考える金額に上限が見えてきたと述べています。

ただし、この見立てには留保が要ります。RampのサンプルはRamp自身のトークン支出管理サービスの利用企業に由来し、テック企業に偏りがあると同社も明記しています。日本の不動産業界の実態をそのまま映した数字ではない点は、読むときに割り引く必要があります。

なお、事業者数の広がりは別の動きを見せています。2026年7月時点で、Anthropicのサブスクリプションまたはトークンに支払った米国企業は43.5%(前月比プラス1.1ポイント)、OpenAIは39.7%(同プラス0.23ポイント)、xAIは4%(同プラス0.94ポイント)でした。契約する企業は増え続けている一方で、支出の伸びは鈍りつつある、というのがRampの読み筋です。

日本の不動産事業者にとっての論点:AI予算の3つの基準

この数字から不動産事業者が持ち帰れる論点は3つあります。

1つ目は、業務ごとに必要な性能の水準が違うという点です。物件紹介文のたたき台づくり、問い合わせへの一次返信の下書き、募集条件の表記ゆれの点検といった作業は、定型度が高く、出力を人が読んで直す前提で回せます。ここに最上位モデルを充てても、体感できる差が出ないまま単価だけが上がる可能性があります。一方で、重要事項説明書の下書き点検や契約書の条項比較のように、見落としの代償が大きい業務では、上位モデルの精度が費用に見合う場面が出てきます。どちらも宅地建物取引士の確認を前提にした補助として使うことが前提です。

2つ目は、効果の測り方を先に決めることです。Rampの集計では、2026年7月に米国企業がAIに支出した額は、中央値の企業で従業員1人あたり月11.95ドル、上位10%で650ドル、上位1%では7,400ドルと大きな開きがありました。円換算の水準は為替によって変わりますが、中央値の企業は月あたり数百円台から数千円台の規模でしか使っていないことになります。金額そのものより重要なのは、その支出が何を減らしたかを数えられるかどうかです。1物件あたりの入稿時間、問い合わせへの初回返信までの分数、退去精算1件あたりの処理時間といった単位で先に測っておくと、増額の判断も撤退の判断もしやすくなります。この考え方はAI賃貸管理のROI算定と検証でも詳しく整理しています。

3つ目は、モデルを固定しないことです。Rampのデータでは、オープンソース系のモデルが最先端との差を数か月まで詰めてきていると指摘されています。価格も性能順位も年単位ではなく月単位で動く領域です。特定のモデル名を前提に業務手順を組んでしまうと、値上げや提供条件の変更があったときに業務ごと止まります。手順書とプロンプトを自社の資産として残し、モデルは差し替え可能な部品として扱う設計にしておくほうが、長い目で見て安全です。あわせてAI利用コストの管理の考え方も参考になります。

明日からの初動

まず、いま使っているAIの用途を一覧にして、それぞれに「人の確認がどれだけ必要か」を書き添えることをおすすめします。確認の手間が大きい用途ほど上位モデルの投資対効果が出やすく、確認がほとんど要らない定型作業は安価なモデルで十分なことが多いためです。

次に、同じ作業を2つの価格帯のモデルで並行して走らせ、手直しに要した時間を数えてみることです。1週間分でも、感覚ではなく数字で比較できるようになります。差が出なければ安いほうに寄せ、差が出るならその作業だけ上位モデルを使う、という切り分けができます。

三つ目に、顧客の氏名や連絡先を含むデータを扱う場合は、利用範囲についての社内ルールと本人同意の取り方を先に固めておくことです。モデルの選定より前に整理しておくべき論点で、後から遡って直すのは手間がかかります。AI査定の出力を顧客に示す場合も、参考値であることと、最終的な判断は宅地建物取引士が行うことを明示する運用が求められます。

最後に、契約は短い単位から始めることです。年契約で価格を固定するより、月単位で見直せる形にしておくほうが、この変化の速さには合っています。導入の進め方は中小不動産会社のAI導入手順も参考にしてください。

まとめ

最も高性能なモデルが最も使われているわけではない、というのが今回のデータが示した事実です。企業が支払う金額には、性能ではなく「効果を説明できるかどうか」という上限がかかっています。不動産事業者がAI予算を組むときも、モデルの順位表ではなく、自社の業務のどこで手直しの時間が減ったかを基準に置くほうが判断を誤りにくくなります。用途ごとに水準を分け、効果を数え、モデルは差し替え可能にしておく。この3点を押さえておけば、価格が動いても業務は止まりません。

参考文献

※不動産のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社の不動産事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://fudosannochikara.jp/contact/

引用元: THE DECODER


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)