AI自動化ツールRelayが撤退、不動産業のツール選定3つの論点

AI自動化ツールRelay.appが2026年9月14日で終了。不動産事業者が押さえるべき個人情報の委託先監督、業務の属ツール化、ブラウザ層への移行という3つの論点と初動アクションを解説します。

AI自動化ツールRelayが撤退、不動産業のツール選定3つの論点

AIワークフロー自動化サービスのRelay.appが、2026年9月14日でサービスを終了します。

Zapier対抗として2021年に立ち上がったAI自動化ツールが、わずか5年でたたまれました。無料プランは2026年8月15日、有料プランは9月14日で停止し、その後アカウントとデータは完全削除されます。創業者はGoogleのChromeチームへ移籍します。AIツールを業務に組み込み始めた不動産事業者にとって、これは他人事ではありません。「使っているツールが来月消える」ときに何が起きるかを、具体的な日程つきで示した事例だからです。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が解説します。

Relay.appのサービス終了告知ページ

Relay.app終了の事実関係と60日の猶予期間

Relay.appの終了は、無料ユーザーが2026年8月15日、有料ユーザーが9月14日という二段階のスケジュールで進みます。TechCrunchによると、Relayは2021年にローンチされ、業務の反復作業を自動化するワークフローツールとして、文書ドラフトや校正、プロジェクト管理タスクの効率化を提供してきました。

公式告知によれば、2026年7月16日の時点で新規登録と無料版からの有料アップグレードはすでに停止しています。有料契約は7月16日付で自動解約され、年額契約者には未使用期間の日割り返金が5営業日以内に処理されます。移行を支援するため、終了までの期間は月25,000ステップと10,000AIクレジットが無償で追加されました。

データの持ち出しについては、ワークフロー、シーケンス、MCPサーバーの構成をJSONとAIプロンプト形式のマークダウンで書き出せるほか、実行履歴やテーブルデータをCSVでエクスポートできます。ただし期限を過ぎたアカウントとデータは完全削除され、連携していた外部アプリの認証トークンやクレデンシャルも同時に消えます。

創業者のJacob Bankは、GoogleにVP of Product for Google Chromeとして復帰します。BankはTimefulというスケジュール管理スタートアップがGoogleに買収されたことをきっかけに2015年にGoogleへ入社し、GmailやGoogleカレンダー、Google Chatのプロダクトリードを務めた経歴を持ちます。Chromeについて「エージェントと協働するのに最適な場所」と述べており、ブラウザ層でのAI自動化に主戦場を移す構えです。なお2026年8月11日には、Geminiアプリの利用者が10億人を超えたと報じられています

不動産事業者が向き合うべき3つの論点

不動産業務でAIツールを使う際に最も重い論点は、業務停止リスクではなく個人情報の所在です。宅建業者は、入居申込者の氏名、勤務先、年収、緊急連絡先、売買顧客の資産状況といった、極めてセンシティブな個人情報を日常的に扱います。これらを外部のAI自動化ツールに流し込んでいた場合、サービス終了は「委託先が消える」事態そのものです。

第一の論点は、個人情報保護法における委託先監督の問題です。同法は、個人データの取扱いを外部に委託する場合、委託元に必要かつ適切な監督を求めています。委託先が事業を終了するなら、データが確実に削除されたことの確認まで委託元の責任範囲に入ります。Relay.appは削除を明言していますが、すべてのAIツールが同等の告知と猶予を提供するとは限りません。むしろ今回は、60日の猶予、日割り返金、無償クレジット追加、エクスポート機能の整備まで揃っていた点で、撤退の作法としては丁寧な部類です。より小規模なツールが黙って停止するケースを想定しておく必要があります。

第二の論点は、業務プロセスの属ツール化です。追客メールの自動送信、内見予約の振り分け、レインズ情報の転記、契約書ドラフトの生成といった手順を特定ツールの画面上だけで組んでしまうと、そのツールが消えた瞬間に業務手順そのものが失われます。Relay.appがワークフローをAIプロンプト形式で書き出せるようにしたのは、この乗り換えコストを下げるためです。裏を返せば、エクスポート機能を持たないツールに業務を預けるのは危険だということになります。

第三の論点は、AI自動化の主戦場がブラウザ層へ移りつつあることです。Chromeにはすでにアシスタント機能としてGeminiが統合されており、そこへ自動化ツールの創業者が合流します。専用の自動化SaaSを契約せずとも、日常業務で使うブラウザ側で完結する範囲が広がる可能性があります。不動産業務の多くはSUUMOやレインズなどブラウザ上の管理画面で完結するため、この動きは業界にとって無視できません。ただし現時点でChromeに何が実装されるかは公式に発表されておらず、この点は要確認です。

明日からできる初動アクション

まず取り組むべきは、社内で稼働中のAIツールの棚卸しです。ツール名、契約形態、月額費用、投入している情報の種類、個人情報の有無、エクスポート可否を一覧にします。この作業だけで、想定より多くのツールに顧客情報が分散していることに気づく事業者が少なくありません。

次に、業務手順のドキュメント化です。ツールの画面キャプチャではなく、「どのタイミングで、どの情報を、どう処理し、誰に渡すか」を文章で残します。この形で残しておけば、ツールが変わっても手順は生き残ります。Relay.appがワークフローをAIプロンプトとして書き出せるようにしたのは、まさにこの発想です。

三つ目は、契約時の確認事項に「終了時のデータ取り扱い」を加えることです。データのエクスポート形式、削除の証明方法、猶予期間の長さ、返金規定を導入前に確認します。無料プランでの試用中に業務を載せきってしまうと、今回のRelay.appのように有料ユーザーより短い猶予で切られる場合があります。

四つ目は、業務上クリティカルな処理を単一ツールに集中させないことです。契約や入居審査といった止まると即座に売上に響く処理は、手作業でも回せる代替手順を残しておきます。

まとめ

Relay.appの終了は、AI自動化ツールが本質的に流動的なレイヤーであることを示しました。不動産事業者に必要なのは、特定ツールへの信頼ではなく、いつでも乗り換えられる状態を維持する設計です。ツールの棚卸し、業務手順の文書化、契約時のデータ取り扱い確認という三点を、今月中に着手することをおすすめします。

参考文献

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引用元: TechCrunch


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)