米フロリダの住宅会社Akel Homesの社長は、非エンジニアのままAIで自社の業務基盤を約8か月で構築したと報じられています。
本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が解説します。米国の住宅専門メディアHousingWireは2026年9月28日、フロリダ州パームビーチガーデンズの住宅会社Akel Homesの社長アレックス・アケル氏が、AIツールを使って自社専用の業務基盤を作った事例を伝えました。開発に使った時間は1,600〜1,800時間、期間は約8か月とされています。AI業務基盤の自社構築が、コードを書けない経営者にも届く段階に入ったことを示す話題であり、日本の不動産事業者にとっても他人事ではありません。
何が起きたか:非エンジニアの社長が業務基盤を自作
AI業務基盤の自社構築とは、市販のソフトを買って合わせるのではなく、自社の業務の流れに合わせてAIの力で専用システムを作ることを指します。HousingWireによると、アケル氏は34歳で、同媒体が最初に取り上げたのは2019年、27歳のときでした。アケル氏自身は「自分は不動産開発者であり、ウェブ開発者ではない。コードの書き方は何も知らない」と語っています(HousingWireの記事より)。
開発体制は、アケル氏本人と外部のウェブ担当者1名のみで、作業の約9割をアケル氏自身が担ったと伝えられています。システムが扱う範囲は、販売と見積もり、設計の選択、購買、工事の工程管理、現場の運用、協力会社との調整、顧客対応、財務の可視化にまたがります。つまり、営業から現場、お金の流れまでを1つの基盤につなぐ設計です。
事業の規模も具体的です。アケル氏が手がける分譲地Catalan Palmsは約1,350戸の計画で、2月初旬以降の販売は200戸超とされています。同社は初の売上100億円級の年度を目指しており、戸数を100戸、300戸、500戸と広げる計画です。ただし、売上や戸数の水準は同社の発言に基づく報道であり、第三者による検証は確認できていないため要確認です。
日本の不動産事業者にとっての論点
この事例の核心は、AIの性能ではなく、業務を端から端まで理解している人がAIを指揮したから成立した、という点にあります。アケル氏は「事業をAからZまで理解している」と述べ、「現場のデータがリアルタイムでシステムに入る」ことでAIから洞察を得られるとも語っています。AIは、整ったデータと明確な業務の流れがあって初めて力を発揮する、という構図です。
日本の不動産事業者に置き換えると、論点は3つあります。1つ目は、業務データの置き場所です。物件情報、顧客対応履歴、契約の進捗が、担当者のメールや表計算ファイル、複数のポータルサイトの管理画面に散らばっていると、AIに読ませる以前に整理が必要になります。2つ目は、業務の言語化です。賃貸仲介なら、問い合わせから内見、申込、審査、契約、鍵渡しまでの手順を、誰がいつ何を判断するかまで書き出せるかが出発点になります。3つ目は、人に残す判断の線引きです。重要事項説明など宅地建物取引士の責任に直結する業務は、AIが下書きを作っても最終判断は人が担う設計が欠かせません。
なお、顧客の氏名や連絡先をAIに入力する運用には、個人情報保護法への配慮が必要です。自社専用の基盤を作る場合も、どのデータを外部のAIサービスに送るのかを事前に決めておく必要があります。
今後の展望と初動アクション
アケル氏の事例は、AIによる内製化の可能性を示す一方で、再現するには前提があります。1,600時間という工数は、経営者が本業の傍らで負担できる水準ではない場合が多く、同じ手法がそのまま日本の中小事業者に当てはまるとは限りません。内製の保守や、AIが生成したコードの品質管理を誰が担うのかも、記事からは読み取れず要確認です。
そこで、日本の事業者が最初にやるべき初動は、システムを作ることではなく、業務の棚卸しです。まず、週に何時間もかかっている定型業務を3つ書き出します。次に、その業務で使う情報がどこにあるかを確認します。そのうえで、問い合わせへの一次返信や物件資料の下書きなど、失敗しても影響が小さい領域から、市販のAIツールで試すのが現実的です。効果が見えた段階で、基盤の自作か、外部の支援を受けるかを判断すれば、投資の失敗を避けられます。
まとめ
アケル氏の取り組みは、1,600時間超をかけて業務の全体像をAIに預けられる形にした事例です。日本の不動産事業者が学ぶべき点は、ツールの導入より先に、業務とデータの整理に着手することです。自社の業務をどこまで言語化できているかが、AI活用の成否を分けます。
参考文献
- HousingWire: Can a $100M homebuilder build his own operating system with AI?
- 個人情報保護委員会: 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等
- 国土交通省: 不動産情報ライブラリ
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引用元: HousingWire
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)