Google は2026年9月15日、リアルタイム音声AI「Gemini 3.8 Live」を公開しました。
不動産会社の反響対応は、いまも電話が主戦場です。ポータルサイト経由の問い合わせが鳴っても、来店客の接客中や定休日には取りこぼしが起きます。今回のモデルは、会話を止めないまま裏側でシステム照会を走らせる設計になっており、この取りこぼしに直接効く可能性があります。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が解説します。
Gemini 3.8 Live とは何か、どこが新しいのか
Gemini 3.8 Live とは、Google が2026年9月15日に公開した、音声で直接やり取りするリアルタイム対話モデルのことです。Google の公式発表によれば、同時に上位版の Gemini 3.8 Live Extended Thinking も公開され、後者は Artificial Analysis の Speech to Speech Quality Index で総合首位となる82.6を記録しました。エージェント的なタスク完遂を測る τ-Voice では68.6パーセント、Sierra の τ-Voice-banking では35.1パーセント、音声推論の Big Bench Audio では97.7パーセントという数字が公開されています。標準版の Gemini 3.8 Live も Speech Agent Arena で2位に入っています。
不動産の現場に効きそうな機能は4点です。ひとつめは非同期のファンクションコールで、APIやツールの呼び出しをバックグラウンドで走らせながら、音声応答を途切れさせずに続けられます。ふたつめは会話の途中で97言語を自動判別して切り替える多言語対応です。みっつめは確認番号などの英数字を正確に聞き取る精度、よっつめはカメラ映像をほぼリアルタイムで参照する視覚コンテキストです。価格は開発者向けの解説で、音声入力が1分あたり0.005ドル、音声出力が1分あたり0.018ドルと示されています。
不動産の電話一次対応にどう効くのか、3つの論点
結論から言えば、効くのは「取りこぼし」「多言語」「保留時間」の3点です。
第一に、営業時間外と接客中の反響電話です。ポータルサイトからの反響は、返答までの速さがそのまま来店率に響きます。無人の時間帯に一次受付だけでも成立すれば、翌営業日に折り返す前提の運用とは前提が変わります。音声AIによる架電・受電の実務論点は、音声AIが年間2,000万件の通話を処理する事例でも整理しています。
第二に、外国人の入居希望者やオーナーへの対応です。会話の途中で言語が切り替わっても追随する仕様は、対応言語ごとに担当者を置けない中小の賃貸仲介・賃貸管理にとって現実的な選択肢になります。従来は翻訳アプリを介した折り返しが定番でしたが、その一往復が失注の原因になっていた店舗は少なくないはずです。
第三に、照会中に生じる保留時間です。空室状況や条件の確認で相手を待たせる数十秒は、実務上いちばん離脱が起きるポイントです。非同期のファンクションコールは、基幹システムや物件データベースへの問い合わせを裏で走らせながら会話を続ける前提の仕組みなので、この保留そのものを設計から消せる可能性があります。
コストの目安も押さえておきます。入力と出力をあわせると1分あたり最大0.023ドル、5分の通話なら0.115ドルです。1ドル150円と仮定すれば1件あたり18円弱という単純計算になります。ただしこれはモデルの利用料だけで、電話回線やSIP接続、基幹システムとの連携開発、運用監視の費用は別に積み上がります。実勢の総額はベンダー見積もりでの確認が要ります。

導入前に決めておくべきこと
まず業務の線引きです。宅地建物取引業法35条の重要事項説明は、宅地建物取引士が行うものです。IT重説が認められている現在も説明の主体は宅建士本人であり、AIに置き換えることはできません。AIに任せられるのは、一次受付、空き状況の案内、来店や内見の日程調整、折り返しの要否判断といった手前の工程までと考えるのが安全です。
次に個人情報の扱いです。通話の録音とAI処理を行うなら、個人情報保護法にもとづく利用目的の特定と通知・公表、外部サービスを使う場合の委託先管理が前提になります。自社の利用目的にAI解析が含まれているかを、プライバシーポリシーと利用規約の両面で点検してください。生成AIに顧客情報を通す際の設定論点は、AI事業者の会話データ取り扱いを整理した記事も参考になります。
三つめは告知です。応対しているのが人ではないことを通話冒頭で伝える運用をおすすめします。Google は生成した音声すべてに SynthID の電子透かしを入れると説明していますが、これは事後の検出手段であり、顧客への説明責任を代替するものではありません。なお、AI応対の告知が業法上どこまで求められるかは現時点で明確ではなく、要確認の論点です。
初動は、対象を営業時間外の着信だけに絞った3か月の試験運用から始めるのが現実的です。指標は、応答率、一次対応の完了率、有人へのエスカレーション率、来店・内見予約への転換率の4つで足ります。
まとめ
Gemini 3.8 Live は、会話を止めずに裏側の照会まで走らせられる点で、不動産の電話一次対応と相性のよいモデルです。一方で重要事項説明の代替にはならず、個人情報と告知の設計が先に要ります。まずは営業時間外の着信に限定した小さな検証から着手し、転換率で判断するのが堅実な進め方です。
参考文献
- Google – Introducing Gemini 3.8 Live and 3.8 Live Extended Thinking
- Google – Build real-time voice applications with Gemini 3.8 Live and 3.5 Transcribe
- Google AI for Developers – Gemini Live API overview
- Artificial Analysis – Speech to Speech Arena
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引用元: Google(The Keyword)
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)