OpenAIが、AIらしい定型表現を避けるための禁止ワード一覧を公開しました。
生成AIで物件紹介文や追客メールを書く不動産事業者にとって、見過ごせない更新です。OpenAIは最新モデル向けのモデルガイダンスを更新し、出力から取り除くべき「AIらしい言い回し」を10項目前後、名指しで列挙しました。あわせて、プロンプトで直接調整できるモデルの挙動を5つに整理しています。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が、日本の不動産実務に引き直して解説します。

OpenAIが公開した禁止ワードと、5つの調整可能な挙動
結論から言えば、今回の指針の核心は「モデルを賢くする方法」ではなく「モデルの癖を消す方法」です。OpenAIのモデルガイダンスは、最新モデルGPT-6 Astra向けのプロンプト設計として、避けるべき定型表現を具体的に挙げています。挙げられているのは、結論部の「Bottom Line:」、delve(掘り下げる)、foster(育む)、leverage(活用する)、「it’s worth noting」(特筆すべきは)、「importantly」(重要なことに)、疑問文に自答する「Question? Answer.」の型、「This isn’t about X. It’s about Y.」という対比構文、genuinely(本当に)、そしてハイフンでつないだ複合的な形容表現などです。いずれも、読み手が一目で「AIが書いた文章だ」と判断する要素として整理されています。
もうひとつ実務的に重要なのが、出力形式に関する記述です。ガイダンスは、このモデルが既定で箇条書き・表・Markdown記法を多用する傾向があるため、散文が必要なら明示的に指示するよう促しています。物件紹介文やメール本文のように、箇条書きだと事務的に見えてしまう用途では、この一文を知っているかどうかで仕上がりが変わります。
さらにガイダンスは、プロンプトで直接チューニングできる挙動として、指示への踏み込み方(initiative and follow-through)、指示遵守(instruction following)、人格と文体(personality and writing style)、サブエージェントへの委任(subagent delegation)、検証とテスト(testing and verification)の5領域を示しています。文体はプロンプトで制御できる対象だと公式に位置づけられた、と読むのが素直な理解です。
なお、モデル本体の性能面については、The Decoderが、GPT-6 Astraは前世代より事実誤りが減った一方、隠された指示を紛れ込ませるプロンプトインジェクションには依然として弱さが残ると報じています。文章品質と安全性は別問題である点は、押さえておく必要があります。
日本の不動産事業者にとっての論点は「二層の禁止ワード表」
日本の不動産実務にそのまま持ち込むうえで、まず押さえるべき前提があります。今回列挙されたのは英語表現であり、日本語の出力にそのまま効くわけではありません。日本語で同じ現象を潰すには、自社で日本語版の禁止ワード表を作る必要があります。
現場でよく出るのは、「いかがでしたか」「〜と言えるでしょう」「ポイントは3つです」「〜をお探しの方にはぴったりです」「〜な暮らしを実現しませんか」といった、どの物件にも当てはまる無内容な定型句です。これらは検索エンジンにも読み手にも情報量を与えず、他社の生成文と区別がつかなくなります。物件紹介文の差別化は、駅からの実測分数、周辺施設の具体名、設備の型番や更新年といった固有情報でしか作れません。
そしてもう一層、日本の不動産事業者には法令由来の禁止ワードが必要です。不動産の広告表示は、景品表示法と不動産の表示に関する公正競争規約の規律を受けます。生成AIは指示しなければ販促的な強い断定を平然と書くため、資産価値が必ず上がる、といった将来予測の断定や、絶対・完全・日本一・最高級といった最上級表現、合理的根拠のない「駅徒歩5分」表記などが混入します。AI査定の数値をそのまま提示するのも危険で、参考値であること、最終判断は宅建士が行うことを併記する運用が要ります。宅建業法まわりの線引きは、宅建業法とAI利用のグレーゾーンで整理しています。
つまり必要なのは、AIらしさを消す層と、法令違反を止める層の二層構造の禁止ワード表です。OpenAIが公式に禁止ワード方式を採ったことは、この運用が特殊なノウハウではなく標準的な設計だと確認できた、という意味を持ちます。
明日から着手できる3つの設計
第一に、禁止ワード表をA4一枚で作り、システムプロンプトに貼り込むことです。AIらしさ層は10〜20語程度、法令層は景表法と公正競争規約から拾った断定・最上級表現を並べれば十分に機能します。全物件の紹介文生成に同じプロンプトを通す運用にすれば、担当者の力量差も同時に埋まります。
第二に、出力形式を毎回明示することです。散文で書くのか箇条書きにするのか、文字数の上限はいくつか、体言止めを使うか、電話番号や来店を促す一文を入れるかまで、テンプレートとして固定します。既定で箇条書きに寄る挙動があると分かっている以上、指定しないほうが例外だと考えたほうが安全です。追客メールの型づくりは、不動産の追客メールをAIで作る8シナリオも参考になります。
第三に、検証工程を人の手順として残すことです。ガイダンスが挙げた5領域のうち、検証とテストは不動産業では法令遵守そのものに直結します。生成文をそのまま掲載せず、禁止ワードの機械チェックを通したうえで、宅建士または広告責任者が事実関係と表示の妥当性を確認する二段構えにします。写真キャプションを自動生成している場合も同様で、物件写真のキャプション自動生成の運用に検証ステップを組み込んでおくと、後戻りが減ります。
まとめ
OpenAIが禁止ワードを公式に列挙したことは、生成文の品質がプロンプト設計で決まるという事実を、開発元自らが認めたということです。日本の不動産事業者がやるべきは英語リストの直訳ではなく、AIらしさを消す層と景表法・公正競争規約を守る層を重ねた自社版の禁止ワード表を作り、出力形式の明示と人による検証をセットで回すことです。この三つは、今日中に着手できます。
参考文献
- OpenAI「Model guidance」(最新モデル向けプロンプト指針)
- The Decoder「OpenAI shares prompting tips for GPT-6 Astra including a blocklist of slop words」
- The Decoder「OpenAI’s GPT-6 Astra hallucinates less but remains vulnerable to hidden prompt injections」
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)