AI生成画像が不評なのは、モデルが無難で心地よい表現に収束するからです。
米国の飲食店がAIに作らせたメニュー写真が「気持ち悪い」と拡散している、というニュースが2026年9月3日に報じられました。一見すると他業界の話ですが、同じ構造の問題は日本の不動産広告でもすでに起きています。物件写真のAI加工、AIバーチャルステージング、AI生成の外観イメージは、いま多くの不動産会社が試している領域だからです。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が、広告実務の視点で守るべき3つの線を整理します。
何が起きたか、AI生成の画像が全部同じ顔になっている
結論から書くと、AI生成画像が不評な原因は技術の未熟さではなく、学習データが無難な平均値へ収束することにあります。TechCrunchが2026年9月3日に報じたところによると、米国の飲食店でAIに作らせたメニュー写真が「不気味だ」「食欲が失せる」としてSNSで拡散し、批判が広がっています。
AI検知企業Reality DefenderのCTOであるAlex Lisleは、この現象を「ピザの原理を理解していない宇宙人が作ったようだ」と表現しています。生成物の多くが2015年頃のチェーン店メニューのように見えるのは、モデルが学習した元データがまさにそれだったからだ、という説明です。
さらに厄介なのが、AIの生成物が再び学習データに戻ることで同質化が加速する点です。Lisleはこれをモデル崩壊(model collapse)ではなく収束(convergence)と呼び、出力が完全に使い物にならなくなるのではなく、少しずつ質が削られていく現象だと整理しています。Elon UniversityのLee Rainieも、データセットが「不快でないこと」に最適化された結果として均質化が起き、AIは表現の角を削り落とすと述べています。
編集を重ねるほど劣化する点も、実務では見逃せません。X上のあるユーザーがChatGPTで作ったメニューを100回編集し続けたところ、食べ物の造形が回を追うごとに丸く滑らかになり、現実から遠ざかっていったという検証が紹介されています。価格や商品名を少しずつ直すという、広告制作でごく普通に行う作業が、画像そのものを壊していくわけです。

そして、この不評は感覚論ではありません。ドイツのデュースブルク=エッセン大学のAlexander Dielらによる研究では、AI生成の食品画像に不気味の谷が生じ、わずかに現実とずれた画像のほうが、明らかに非現実的な画像よりも強い嫌悪と不快を引き起こすことが示されています(Eerie edibles)。人は、ほとんど本物に見えるのに何かが違う画像に、最も強く反応するということです。
不動産に効いてくる理由、加工は「注記すればOK」ではない
日本の不動産事業者にとって重要なのは、この話が景品表示法と不動産の表示規約の世界に直結する点です。結論を先に書くと、AIで生成・加工した画像に「AIによるイメージです」と注記しても、それだけで不当表示を免れることはできません。
首都圏不動産公正取引協議会の相談事例には、この論点がほぼそのまま載っています。表示規約第23条第1項第42号は、写真、動画、コンピュータグラフィックス、見取図、完成図、完成予想図による表示のうち、物件の規模・形状・構造等について事実に相違する表示、または実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示を禁止しています。あわせて表示規約施行規則第9条第23号は、CGや完成予想図はその旨を明示して用い、物件の周囲の状況について現況に反する表示をしないことを求めています。
同協議会は、建物前面の電柱や電線を消して現地写真とCGを合成し、「一部修正を加えて合成したものです。実際とは多少異なります」と注記した表示案について、周囲の環境に変更を加えており著しく優良であると誤認されるおそれがある不当表示に該当する、と回答しています。注記の記載をもって一般消費者の誤認が排除されるとは認められない、という判断が明記されています。
これをAI画像に置き換えると、危険な運用がはっきり見えてきます。生成AIに「もっと明るく」「もっと広く見えるように」と指示して室内写真を整える行為は、電柱を消すのと同じ構造です。生成AIは指示していない部分まで滑らかに描き替えるため、床材の質感、窓の外の景色、建具の形状、天井の高さの印象までが静かに変わります。加工したつもりがなくても、事実と相違する表示が出来上がってしまうのが、AI加工に固有のリスクです。
もう一つの論点が同質化です。AIが平均値へ収束するということは、A社の物件写真とB社の物件写真が同じ顔になるということでもあります。ポータルサイトで何十件も横並びに表示される不動産広告で、写真の個性が消えることは差別化の消失を意味します。反響を増やすために導入したAIが、反響の源泉である「この部屋を実際に見てみたい」という感覚を削ってしまう可能性があります。
明日からの初動、不動産広告で守るべき3つの線
第1の線は、現況を写した実写を主、AIを補助と位置づけることです。生成AIは、明るさ補正、傾きや水平の補正、キャプション作成、募集原稿の下書きといった「事実を変えない作業」に使い、被写体そのものを描き替える用途からは外します。既存記事の生成AIで物件写真のキャプションを自動生成する方法で扱ったとおり、テキスト側の自動化は投資対効果が高く、規約リスクも低い領域です。
第2の線は、バーチャルステージングとCGの明示です。家具を合成した画像には、消費者がはっきり認識できる大きさで「CGによるイメージ」「家具は付属しません」と表示し、実際にその部屋へ搬入可能な家具のみを配置するのが安全側の運用になります。そのうえで、周囲の環境、つまり電柱、電線、隣地の建物、眺望には手を加えないことを社内ルールとして明文化してください。注記は必要条件であって、免罪符ではありません。
第3の線は、編集回数と検収の管理です。100回編集で画像が壊れた検証が示すとおり、AI画像は反復編集で劣化します。生成は1回にとどめ、修正が必要なときは元データからやり直す運用に切り替え、掲載前に現地写真と並べて違いがないかを人が確認する検収工程を置いてください。宅建業法上の広告責任を負うのはAIではなく広告主である事業者です。AI利用と宅建業法の線引きについては宅建業法とAI利用のグレーゾーンでも整理しています。
まとめ
AI生成画像が嫌われる理由は、モデルが無難な平均値へ収束し、わずかに現実とずれた表現を作り出すからです。不動産広告では、この「わずかなずれ」がそのまま表示規約上の不当表示リスクに直結します。実写を主にする、CGとステージングを明示する、編集回数と検収を管理する。この3つの線を先に引いたうえでAIを使えば、制作効率と規約遵守は十分に両立できます。
参考文献
- TechCrunch: The sameness problem behind those unappetizing AI-generated menus
- 首都圏不動産公正取引協議会: 不当表示の禁止
- 不動産公正取引協議会連合会: 公正競争規約の紹介
- Appetite: Eerie edibles: Realism and food neophobia predict an uncanny valley in AI-generated food images
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)