入居者アプリ導入1か月で800人利用、北海道の賃貸管理会社に学ぶDX3つの順序

入居者アプリ導入1か月で800人が利用した北海道の賃貸管理会社イースト住宅情報の事例から、DXを進める順序と初動アクションを不動産事業者向けに解説します。

入居者アプリ導入1か月で800人利用、北海道の賃貸管理会社に学ぶDX3つの順序

賃貸管理会社のイースト住宅情報は、入居者向けアプリを導入してから1か月で800人の利用を集めました。

本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が解説します。賃貸管理業界の専門メディア賃貸DXが2026年9月17日に公開した藤井聡之社長へのインタビューでは、北海道の室蘭・登別・苫小牧で賃貸仲介、管理、売買、民泊を手がける同社が、人口減少の地方で社員を16〜17人から29人へ増やしながらDXを進めた経緯が語られています。AIの話題が先行しがちな今、地方の中小管理会社が「どの順番で」デジタル化したのかは、導入を考える事業者にとって実務的な参考になります。

何が起きたか:振込への一本化から、入居者アプリ、オーナーアプリへ

入居者アプリ活用とは、家賃の支払い案内や各種連絡を、入居者のスマートフォン上のアプリに集約する運営手法のことです。賃貸DXによると、イースト住宅情報は家賃の集金を銀行振込へ切り替え、手作業での現金回収をなくしたうえで、GMOの入居者向けアプリ(GMO Rental DX)を導入しました。導入から1か月で利用者は800人に達しています。さらに、オーナー向けアプリの展開も2026年9月から10月にかけて進める計画だと伝えられています。

同社の藤井社長は、2019年に社長へ就任する前は銀行で融資業務に携わっていた経歴を持ちます。理念は短期の利益だけを追わず、取引先や社員との中長期の信頼関係を重視することだと紹介されています。社員数は16〜17人から29人に増え、人口減少が進む地域でも離職が少ないと記事は述べています。ほぼ全員が宅地建物取引士の資格を持つ点も特徴です。

日本の不動産事業者にとっての論点:アプリより先に、集金と連絡の型をそろえる

論点は3つあります。1つ目は順序です。この事例では、アプリを入れる前に現金集金をやめて振込に統一しています。紙や現金が混在したままアプリを入れても、入居者の連絡先や支払い状況のデータが一元化されず、効果が出にくいと考えられます。AIによる問い合わせ対応や滞納予測を後から載せる場合も、整ったデータが土台になります。

2つ目は、事業の幅です。同社は洞爺湖の民泊施設で2〜3泊あたり10万〜15万円の収入を得ているほか、特定技能の外国人材や高齢者向けの住まい提供、半導体関連の需要を見込んだ2025年の苫小牧進出も進めています。管理戸数が伸びにくい地域では、管理業務のデジタル化で生まれた時間を新しい収益源に振り向ける構図が見えます。

3つ目は、人への投資です。インフルエンザ予防接種の補助や最大2万5,000円の旅行手当といった福利厚生が、少ない離職につながっているとされています。DXで省力化した分を、現場の定着に回している点は、人手不足が深刻な賃貸管理業界にとって示唆があります。なお、アプリ導入による削減工数や収支への効果は記事に数字が出ておらず、要確認です。

今後の展望と初動アクション:アプリが集めたデータにAIを重ねる

入居者アプリとオーナーアプリがそろうと、問い合わせ、修繕依頼、支払い状況が一つの流れで蓄積されます。この蓄積は、AIによる一次回答、修繕の優先度づけ、退去予測といった次の施策の素材になります。ただし、これは本記事の見立てであり、同社が実際にAI活用を計画していると報じられているわけではありません。

初動として、次の3点を試せます。まず、自社の家賃集金の方法を洗い出し、現金や手書き対応が残っている部分を数える。次に、入居者向けアプリを導入する場合は、導入1か月の利用者数を目標として決めておく。最後に、オーナー向けの報告や問い合わせが、メールや電話に分散していないかを点検し、一本化の候補を絞ります。いずれも、生成AIを入れる前にできる土台づくりです。

まとめ

イースト住宅情報の事例は、振込への統一、入居者アプリ、オーナーアプリという順序で、地方の管理会社がDXを積み上げられることを示しています。派手なAI導入ではなくても、データが集まる型をつくることが、その後のAI活用の出発点になります。まずは自社の集金と連絡の流れを棚卸しするところから始めてみてください。

参考文献

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引用元: 賃貸DX


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)