非公開リスティングとは、物件を公開ポータルや業者間の共有網に出さず、特定の会社の中や限られたネットワークだけで売り先を探す手法のことです。
本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が解説します。
HousingWireは2026年10月2日、Engel & Völkers AmericasのStuart Siegel CEOによる寄稿を掲載しました。主張は、物件情報が非公開のネットワークに分かれていくと、消費者から見える供給が実際より少なく見え、価格を押し上げて住宅の買いやすさを損なうというものです。なお寄稿は個人の意見であり、因果関係が実証されたわけではない点に注意が必要です。日本でも囲い込みが長く議論されてきたため、物件データを軸にAI活用を進める事業者には見逃せない論点です。
何が起きたのか:寄稿が挙げた数字と主張
寄稿が前提にしているのは、米国の住宅市場の厳しさです。HousingWireの記事によれば、既存住宅の販売価格の中央値は38か月連続で前年同月を上回り、8月の既存住宅販売は前月比2%減の年率398万戸でした。初めて住宅を買う人の年齢の中央値は過去最高の40歳に達したとも書かれています。
そのうえでSiegel氏は、物件情報の透明性が失われていると指摘しています。シカゴ周辺で公開プラットフォームから物件が消えた最近の事例、ブローカレッジによっては自社内で売り手と買い手の両方を担当する双方代理が増えていること、複数の州で非公開リスティングに関する法案が出ていることが、根拠として挙げられました。最終的な提案は、情報を一部の企業の門番に委ねず、公共財のように扱う市場原理を守るよう立法者に求めるものです。数字の細部は原文での確認が必要で、要確認です。
論点1から3:公開の範囲、囲い込みの誘因、データの扱い
読み取れる論点は3つあります。1つ目は、どの時点で物件を公開網に出すべきかという公開の範囲です。米国では全米リアルター協会(NAR)のClear Cooperation Policy(物件を公開マーケティングするなら一定期間内にMLSへ登録する規則)をめぐって議論が続いてきました。ポータル側でも、Inmanによると、Zillowは2025年6月30日から、専任媒介の物件を公開マーケティングする場合は1営業日以内にMLSまたはIDXフィードへ載せる基準を運用し、3回目の違反で掲載を止める仕組みを導入しています。
2つ目は、双方代理を狙った囲い込みの誘因です。売り手と買い手の両方から手数料を得られる構造があると、他社に物件を見せない動機が生まれます。これは日本の囲い込みと同じ構図です。
3つ目は、データそのものの扱いです。物件情報が分断されると、AI査定や需要予測、生成AIによる物件提案は、見えているデータが偏ったまま学習し判断することになります。公開データが薄い市場では、AIの出力が実態より供給を少なく見積もる可能性があると筆者は見ています。これは推測であり、実証的な裏付けは要確認です。
日本の不動産事業者にとっての示唆
日本では専属専任媒介契約なら契約翌日から5日以内、専任媒介契約なら7日以内に、レインズへの登録が義務づけられています。アットホームの解説によれば、2025年1月1日の改正で、売主にレインズの取引状況を確認するよう周知することが義務化され、登録内容が事実と異なる場合は指示処分の対象になります。米国が議論の途上にあるのに対し、日本は登録義務と是正の仕組みがすでにあります。
ただし制度があっても、図面を未登録のままにする、他社からの問い合わせに応じないといった運用面の囲い込みは起こり得ます。AIによる追客や物件紹介の自動化を進める事業者ほど、他社の物件を誠実に案内できる体制かどうかが、売主からの信頼に直結します。
今後の展望と初動アクション
米国では州ごとの法案や訴訟が続くため、短期的に結論が出る見込みは薄く、継続して追う必要があります。日本の事業者が今できる初動は次のとおりです。まず、自社の専任物件のレインズ登録日と取引状況の更新が、期限どおり行われているかを点検します。次に、他社からの問い合わせ対応を記録し、対応時間を指標として管理します。さらに、AI査定や物件説明の自動生成に使うデータが、自社の物件だけに偏っていないかを確認します。最後に、売主への報告で、レインズの登録状況を見せる運用を標準化します。
まとめ
米国の非公開リスティング論争は、物件情報をどこまで公開するかという問いが、価格やAI活用にもつながることを示しています。日本の事業者は、制度が整っていることに安心せず、登録の速さと問い合わせ対応を数字で管理し、AIに使うデータの偏りも点検することが、信頼を高める近道になります。続報は要確認のうえお伝えします。
参考文献
- HousingWire: Private listing ecosystems could deepen the housing affordability crisis
- Inman: Zillow provides clarity on private listings rule and when it rolls out
- アットホーム: 囲い込みとは
- 国土交通省
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引用元: HousingWire
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)