米Pied Piperの2026年調査では、不動産会社の電話で担当者と話せた消費者は33%、24時間以内に追客連絡が届かなかった割合は73%でした。
本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が、反響対応の初動に注目して解説します。
反響対応の遅れは、日本の仲介会社や管理会社にとっても他人事ではありません。米国の大手ブランドでさえ、問い合わせの大半を取りこぼしているという調査結果が出ました。反響対応とは、ポータルサイトや自社サイトからの問い合わせに初動で返答し、来店や内見につなげる業務のことです。AIによる自動応答や追客の導入を考えている事業者にとって、今回のデータは投資判断の材料になります。
何が起きたか:21ブランド・2198件の問い合わせ調査
Real Estate NewsやPropmodoの報道によると、顧客満足度の測定会社であるPied Piperが2026年6月から7月に、米国の大手不動産ブランド21社へ合計2198件の問い合わせを送りました。電話と各社の店舗サイト経由の両方で、返答の速さと質を0から100点で採点しています。
電話では、97%がオフィスにつながったものの、タイムリーに担当者へ取り次がれたのは53%、実際に不動産エージェントと話せたのは33%でした。電話の平均スコアは100点満点中30点です。さらに73%は、24時間以内に電話・SMS・メールのいずれでも追客連絡を受けていません。
Webからの問い合わせはさらに厳しい結果でした。約10件に1件は問い合わせフォームが正常に動作せず、68%は24時間以内に何の返答もありませんでした。エージェント本人から連絡があったのは18%、1時間以内の連絡は10%にとどまり、Web問い合わせの業界平均スコアは11点です。
ブランド別では、Howard Hannaが最高スコアの30点を記録しました。Compass、United Real Estate、Keller Williamsは、30秒以内に担当部署へつながった割合が40%を下回っています。なお、Propmodoと元の報道ではスコアの対象範囲の書き方が異なるため、総合スコアの扱いは要確認です。
日本の不動産事業者にとっての論点
今回の調査は米国の事例です。日本の反響対応の実態を示す同種の公的統計は、筆者の確認した範囲では見当たりません。数字をそのまま日本に当てはめることはできませんが、構造上の論点は共通しています。
論点の一つ目は、取りこぼしの原因が営業力ではなく初動の仕組みにあることです。報道によれば、担当者につながらなかった消費者は、担当者の名前と直通番号を伝えられるだけで、折り返しは消費者任せになっていました。日本でも、SUUMOやLIFULL HOME’Sなどのポータルサイトからの反響が、営業担当の外出や接客中に滞る場面は珍しくありません。
二つ目は、競合が同時に動いている点です。Pied Piperの担当者は、対応が遅れると顧客が他のエージェントに連絡する時間を与えてしまうと述べています。ポータルサイトから複数社へ一括で問い合わせる利用者が多い日本では、この構図はより強く働きます。
三つ目は、フォームの不具合という地味な落とし穴です。調査では約1割の問い合わせフォームが機能していませんでした。自社サイトの問い合わせフォームが正常に動くか、通知メールが担当者に届くかを、月に一度でも自分で送信して確認している会社は多くないはずです。
追客AIを入れる前に確認したい3つの急所
追客や一次対応にAIを入れる場合の急所は、次の3点です。第一に、問い合わせ受信から最初の返信までの時間を計測することです。計測していなければ、AIの導入効果も比べられません。第二に、AIが返信する範囲と人が引き継ぐ条件を決めることです。物件の空室確認や内見日程の調整は自動化に向きますが、価格交渉や契約条件の判断は宅建士や担当者の仕事として残します。
第三に、個人情報の扱いです。顧客の氏名や連絡先を外部のAIサービスに送る場合は、利用目的の明示と委託先の管理が求められます。個人情報保護法に沿った運用ルールを先に作ってください。また、AIが返す物件情報は、最新の募集状況と一致しているかを人が確認できる仕組みにしておくことが重要です。
今後の展望と初動アクション
今回の結果は、AI導入の話の前に、人の運用で改善できる余地が大きいことも示しています。まずは次の順で動くのが現実的です。最初に、自社サイトとポータル掲載経由の問い合わせを自分で送り、返信までの時間を測ります。次に、営業時間外や接客中の問い合わせに自動返信を設定します。そのうえで、チャットボットやAI追客ツールを比較し、小さな範囲で試します。
AI査定や自動返信の文面は参考情報にとどめ、最終判断は宅建士が行う運用を前提にしてください。反響対応の速さを競争力にできれば、広告費を増やさなくても成約の機会は広がります。
まとめ
米国の大手21ブランドでも、電話で担当者と話せたのは33%、Web問い合わせの68%は24時間以内に返答がありませんでした。日本の事業者は、AI導入の前に初動時間の計測とフォームの動作確認から始め、自動化する範囲と人が引き継ぐ範囲を決めることが近道です。
参考文献
- Real Estate News: Brokerages drop the ball on most consumer phone, web inquiries
- Propmodo: Real Estate Brokerages Fail to Capture Two-Thirds of Inbound Leads
- Pied Piper
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引用元: Propmodo
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)