AIスキルが採用条件に|UBSの新基準で変わる不動産会社の3つの設計

UBSが2027年入社の新卒採用でAIスキルの証明を必須化しました。面接の質問設計から入社後の育成プログラムまで、宅建業法の説明責任を守りながら不動産会社が整えるべき3つの設計を解説します。

AIスキルが採用条件に|UBSの新基準で変わる不動産会社の3つの設計

UBSは2027年入社の新卒とインターンの採用で、AI活用スキルの証明を求め始めました。

スイスの大手銀行UBSが、2027年に入社する新卒とインターンの応募者に対して、AIを使って成果と効率を高められることの証明を求めるようになりました。面接では「実際にどうAIを使っているか」が質問されます。金融の話に見えますが、若手の下積み業務がソフトウェアに置き換わりつつあるという構図は、不動産業界にそのまま重なります。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が、採用要件と育成設計の観点から解説します。

UBSが見ているのはツール名ではなく「使った事実」

UBSが求めているのは資格でもツールの利用歴でもなく、具体的な業務でAIを使って何が良くなったかを本人の言葉で説明できることです。The Next Webによると、対象はグローバル・バンキング&マーケッツ部門の2027年入社組で、Financial Timesが最初に報じました。新たに募集される他の職種にも同じ基準が広がるとされています。

重要なのは、この要件が学歴や対人能力を置き換えるものではなく、あくまで補完として位置づけられている点です。さらに、入社が決まった人材は「AI Fluency Pathway」と呼ばれる社内プログラムを受けます。中身は銀行実務のユースケースと、責任ある使い方です。つまりUBSは、入口で完成した専門性を求めているのではなく、使った経験と学ぶ意思を確認したうえで、残りは自社で育てる設計にしています。スペインのサンタンデールも一部のトレーニープログラムで上級のAI利用者を求めており、この動きは一行の思いつきではなく広がりつつある実務慣行です。

背景には、若手が担ってきた仕事の消失があります。財務分析、リサーチ、資料の組み立てといった「1年目の仕事」が自動化され、UBSは顧客向けプレゼンにアナリストのアバターを試しているとも報じられています。モルガン・スタンレーは欧州の銀行で5年以内に20万人超の職が消えると見込み、今年5月には最大で全職種の2割に達するとの見通しに引き上げました。JPモルガンのジェイミー・ダイモンも、一部部門で30〜40%の職務が削減されたと述べています。

日本の不動産会社にとって、これは採用の話ではなく育成の話

日本の不動産会社が同じ発想をそのまま輸入すると失敗します。求人票に「生成AIの実務利用経験」と書き足すのは簡単ですが、UBSの本体はその後ろにある社内プログラムのほうだからです。

不動産業でAIに置き換わりつつあるのは、まさに新人が最初に任される領域です。物件資料の読み取りと転記、募集図面の作成、ポータルサイト向けの原稿作成、追客メールの下書き、レインズや自社データベースからの類似事例の抽出。ここは生成AIやAI-OCRが得意なところで、実際に導入が進んでいます。効率だけを見れば正しい判断ですが、この作業を丸ごと外すと、若手が現地と書類を突き合わせて違和感に気づく感覚が育たなくなります。

この危険は海外でも指摘されています。JPモルガンの欧州責任者コナー・ヒラリーは、若手が基礎を失うことへの懸念を昨年12月に表明しており、7月に発表された研究は、最初からAIに頼った人材が失敗から学ぶ機会を得られない現象をnever-skillingと呼んでいます。採用面接でAI習熟度を見るだけでは、この問題はまったく解決しません。むしろ、そういう人材を優先的に選んでしまう可能性すらあります。

不動産の場合、ここに宅建業法という強い制約が加わります。重要事項説明は宅地建物取引士が記名し、みずから説明する義務を負う行為です。AIが下書きを作ることはできても、内容の正確性と説明責任は最後まで人に残ります。調査を自分の目で確かめた経験のない担当者が、AIの出力を検証できるとは考えにくいところです。効率化の設計と、判断力を残す設計は、別々に立てる必要があります。

明日から着手できる3つの設計

第一に、採用要件を書き換えるなら、聞き方まで一緒に設計してください。「生成AIを使えますか」では意味がありません。「直近半年で、AIに任せた業務を一つ挙げて、任せる前と後で何がどれだけ変わったか」を聞くほうが、実際の使用経験を判別できます。ツール名を並べられる人ではなく、業務を分解して渡せる人を見分けるための質問です。

第二に、入社後のプログラムを先に用意してください。UBSが入口の要件と同時にAI Fluency Pathwayを走らせているのは、要件だけを立てても人は育たないと分かっているからです。不動産会社であれば、物件調査、契約書類、募集原稿、追客の4領域それぞれについて、AIに任せる範囲と人が確認する範囲を文書で線引きし、新人研修に組み込む形が現実的です。中小規模での進め方は中小不動産会社のAI導入を30日で進める手順にまとめています。

第三に、若手が失敗から学ぶ場を意図的に残してください。たとえば入社1年目は、AIが作った募集図面や重要事項説明の下書きに対して、現地調査と原本照合で差分を出す工程を課す、といった設計です。AIを使わせないのではなく、AIの出力を疑う訓練を業務に組み込む発想です。全社展開まで見据えた設計は不動産会社の全社AI導入も参考になります。

まとめ

UBSの新基準は、AIが若手の仕事を奪うという話ではなく、若手に求める中身が変わったという話です。日本の不動産会社が真似すべきなのは求人票の一行ではなく、入口の要件と入社後の育成プログラムを同時に設計した点にあります。宅建業法が人に残している説明責任を守るためにも、効率化と判断力育成は別々に設計するのが現実的です。

参考文献

※不動産のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社の不動産事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://fudosannochikara.jp/contact/

引用元: The Next Web


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)