AI学習は著作権侵害か|15億ドル和解が不動産AI活用に迫る3論点

AI学習は著作権侵害か。15億ドル和解でも学習自体は適法とされた米判決と、日本の著作権法30条の4・文化庁の考え方を不動産実務に引き直し、物件写真と広告文でとるべき4つの手当てを解説します。

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AIの学習に他人の著作物を使うこと自体は、米国の裁判では違法と判断されていません。

生成AIが書籍や記事を無断で学習していることは違法なのか。この論点をTechCrunchが2026年8月23日に複数の知的財産法の専門家に取材し、答えは「複雑」だと整理しています。物件写真のキャプション生成や広告文の作成に生成AIを使い始めた不動産事業者にとって、これは他人事ではありません。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が、日本法の枠組みに引き直して解説します。

15億ドルの和解でも「学習は適法」と判断された理由

米国の裁判所は、AIの学習行為そのものは適法とし、違法だったのは書籍の入手経路だと切り分けました。2025年、William Alsup 判事は Anthropic に対し作家グループへの15億ドルの和解金支払いを命じましたが、判決文でAI学習自体は適法と述べています。処罰の対象になったのは、違法な海賊版ライブラリから書籍を集めた行為でした。

判事は、LLMが大量の語句を取り込む過程を、作家を志す読者が文学を読み込む行為になぞらえています。知的財産法に詳しい弁護士の Cathy Gellis は TechCrunch の取材に対し、著作権法は「複製」を軸にした法律であり、作品を読むこと・使うこと・体験すること自体は軸になっていないと指摘しています。

もう一つ重要なのが、Thomson Reuters が Ross Intelligence を訴えた事件です。Stephanos Bibas 判事は、判例データを学習して競合する法務プラットフォームを作る行為について「Ross の利用は変容的ではない」と判断しました。弁護士の Jason Henderson が整理するとおり、争点は「学習したかどうか」ではなく「学習した相手と直接競合するか」に寄っています。米国の著作権法は1976年から実質50年間更新されておらず、裁判官が半世紀前の条文でAI時代を裁いている状態です。

日本の不動産実務では「30条の4」と生成物の類似性が焦点

日本では、AI学習は2019年1月施行の著作権法第30条の4によって、原則として権利者の許諾なく行えます。この条文は、著作物に表現された思想や感情を「享受」する目的がない利用であれば、権利者の利益を通常害さないとして許諾を不要にするものです。米国のフェアユースのような裁判所の裁量ではなく、条文で明示されている点が日本の特徴です。

ただし文化庁が令和6年3月にまとめたAIと著作権に関する考え方については、重要な例外を示しています。既存の著作物と類似した生成物を作らせる目的で入力する場合は「享受」目的が併存しているとされ、30条の4が適用されない場合があるという整理です。ここが不動産の現場に直結します。

たとえば他社が制作した物件広告のコピーやパースを生成AIに読み込ませ、「これと同じテイストで作って」と指示する運用は、まさに類似生成物を狙った入力です。物件写真は撮影者の著作物であり、ポータルサイトに掲載されている他社物件の写真を自社の学習用データとして集める行為も、入手経路の適法性が問われます。米国の判決が「学習は適法、海賊版の入手は違法」と切り分けたのと同じ構図です。

出口側にも論点があります。米国の Thaler v. Perlmutter では、100パーセントAIが生成した作品には著作権が認められないと判断されました。自社の物件紹介動画やロゴをAIに丸投げで作らせた場合、その成果物を他社に模倣されても権利主張しづらくなる可能性があります。日本での取り扱いは事案ごとの判断になるため、要確認の領域です。

不動産事業者が今週から実行できる4つの手当て

まずやるべきは、AIに何を入力しているかの棚卸しです。以下の4点を、今週中に社内で確認してください。

第一に、入力データの出所を記録する運用に切り替えます。自社で撮影した写真、自社で書いた原稿、権利処理済みの素材だけを生成AIに入れるルールにし、ポータルサイトや他社サイトからコピーした画像・文章は入力しない。第二に、撮影会社や制作会社との契約書を確認します。写真の著作権が自社に譲渡されているのか、利用許諾にとどまるのか、AI学習への利用が許諾範囲に含まれるのかを見ておく必要があります。

第三に、生成物のチェック工程に人を残します。生成された広告コピーが既存のキャッチコピーに酷似していないか、生成画像が特定の作品を想起させないかを、公開前に人の目で確認する。宅建業法上の広告規制と景表法のチェックと同じタイミングに組み込むのが現実的です。第四に、社内ルールを1枚の文書にします。文化庁が令和6年7月31日に公表したAIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンスは、この社内ルール作りの下敷きとして使えます。

まとめ

AI学習と著作権をめぐる訴訟は米国でも係争中のものが大半で、結論はまだ確定していません。日本の不動産事業者にとって実務的に重要なのは、学習の適法性そのものよりも、入力する素材の出所と、生成物が既存の著作物に似ていないかの2点です。この2点を運用ルールに落とし込んでおけば、法解釈が動いてもすぐには揺らぎません。

参考文献

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https://fudosannochikara.jp/contact/

引用元: TechCrunch


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)