AI全社導入とは、全社員にAIを配り業務で使い切る取り組みのことです。
石川県金沢市の不動産会社クラスコ・ホールディングスが、2024年7月のGoogle Workspace全社導入から1年で、売上2億円増、業務時間22,862時間削減、コスト6,800万円削減という数字を公表しました。いずれも同社が2026年4月14日のリリースで示した自社公表値です。注目すべきは金額よりも、この数字が「特定部署の実証実験」ではなく全社導入から出ている点にあります。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入支援100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が解説します。
多くの不動産会社でAI導入が止まるのは、ツールが悪いからではありません。配ったあと誰も使わない、使う人と使わない人に割れる、成果が測れないという3点で失速します。クラスコの事例が実務者にとって読む価値を持つのは、この3点それぞれに具体的な仕掛けが当たっているからです。以下では、公表された数字の内訳を整理したうえで、中小規模の不動産会社が同じ型を自社に移すための手順とプロンプト6本を提示します。
1年で出た数字は、どの業務から生まれたのか
先に結論を書くと、成果の源泉は生成AIの性能そのものではなく、非生産的業務の比率が高かったという出発点にあります。クラスコのプレスリリースによれば、代表の小村は「AIこそが、人手不足とインフレ時代において企業が生き残るための鍵になる」と判断して全社導入に踏み切りました。その背景として同社が挙げているのが、人件費の8割が情報検索や単純作業といった非生産的な業務に消えていたという認識です。
この「8割」という自己認識が、実は事例の要になっています。AI導入の議論はしばしば「どの業務が自動化できるか」から始まりますが、クラスコは「そもそも人件費のどこに消えているか」から入っています。順番が逆なのです。前者から入ると、自動化しやすい業務を探すことになり、効果の小さい領域に着地しがちです。後者から入ると、金額の大きい領域から順に手が入ります。
公表されている成果は4つです。売上2億円増、業務時間22,862時間削減、コスト6,800万円削減、そして助成金5.8億円の獲得。このうち業務時間の22,862時間は、1人あたり年間2,000時間労働と仮定すると約11人分に相当します。全国賃貸住宅新聞は「12人分の業務削減効果」として報じており、算定の前提が少し違うと見られますが、いずれも同じオーダーの話です。数字はすべて同社の公表値であり、第三者による検証値ではない点は押さえておいてください。
現場レベルで公表されている変化も具体的です。リスト照合、物件紹介文の作成、初期費用の算出といった作業をAIで自動化・高速化し、数時間かかっていた業務を10分以内に短縮したとしています。ここは賃貸仲介の実務者なら想像がつく領域でしょう。物件紹介文は1件あたり15分から30分かかり、繁忙期には1日に何十件も発生します。初期費用の算出も、賃料・共益費・敷金礼金・保険料・鍵交換費用・仲介手数料と項目が多く、確認に時間を取られます。
試算してみると、規模感がつかめます。物件紹介文を1件20分で作成し、月に200件処理している賃貸仲介の店舗なら、月67時間が紹介文だけに消えています。これが10分以内に短縮されれば月33時間、年間で約400時間が浮く計算です。時給換算2,000円なら年80万円分の人件費に相当します。1店舗でこの規模ですから、複数店舗を展開する会社では桁が変わります。数字は自社の件数と所要時間に置き換えて計算してください。
初期費用の算出も同じ構造です。1件あたり10分の確認作業が発生し、月に150件の申込があれば月25時間。金額の誤りが発覚すると再説明と訂正が発生し、実際の工数はこれより膨らみます。ここは削減時間だけでなく、訂正の発生件数という品質指標でも効果が測れる領域です。
もうひとつ見逃せないのが、スライド資料、プロモーション動画、BGM制作といった、従来は専門スタッフや外注が担っていた制作物の内製化です。不動産会社の広告費のうち、制作費が占める割合は決して小さくありません。ここが内製化できると、コスト削減が売上ではなく利益に直接効きます。コスト6,800万円削減の内訳は公表されていませんが、制作費と外注費の見直しが含まれていると読むのが自然です。
使わせる仕組みを3つ持っていたことが分岐点
同じツールを配っても差がつく理由は、定着の設計にあります。クラスコが公表している仕組みは3つで、いずれも派手さはありませんが、AI導入の現場を見てきた立場からすると、この3つが揃っている会社は多くありません。
1つ目が、毎朝の全社朝礼でのAI事例共有です。「誰が、どの業務を、どう改善したか」を全社へ横展開する場を、毎日設けています。ここでの肝は頻度です。月1回の勉強会だけでは、参加した人の記憶が薄れる前に次が来ません。毎朝であれば、昨日誰かがやったことを今日自分が真似できます。現場で繰り返し見るのは、研修を1回やって終わりにして、3か月後に誰も使っていないというパターンです。
2つ目が、月1回の部署横断の共有会です。朝礼が「速さと頻度」を担うのに対して、月次の会は「深さと横断」を担います。賃貸仲介の担当者が使ったプロンプトを管理部門が転用する、といった移植は、部署をまたぐ場がないと起きません。この二層構造が、日次の小さな改善と月次のまとまった移植を両立させています。
3つ目が、AIロープレによる人材育成です。同社は創業62年のノウハウをAIに学習させた教育システムを構築し、若手が先輩に気兼ねなく何度でも接客練習できる環境を作りました。公表されている成果は、従来の平均成約率の約1.4倍、新人の現場デビューが3か月から2か月へと33%短縮、指導役の拘束時間が1店舗あたり1,000分削減で指導工数83%減というものです。これらも同社の公表値です。
このAIロープレの発想は、他社が模倣しやすい部分と、しにくい部分が明確に分かれます。模倣しやすいのは、ロープレの相手をAIに務めさせるという形式そのもの。汎用の生成AIでも設計次第で作れます。模倣しにくいのは、62年分の自社ノウハウという学習素材です。ここは自社の音声議事録、成約に至った商談メモ、クレーム対応の記録といった一次データを、地道に集めた会社だけが持てます。直近の支援案件で観測したのは、素材集めを後回しにしてツール選定から入り、結局は汎用的な受け答えしか返ってこないという停滞でした。
数字の見立てとしては、賃貸仲介1店舗で新人が3か月に1人入る規模なら、育成期間の1か月短縮は年間で数百時間の指導工数に相当します。全社で複数店舗を持つなら、これだけで数千時間規模です。22,862時間という総量は、こうした個別の削減が積み上がった結果だと読むのが妥当でしょう。
中小の不動産会社が同じ型を移す6ステップとプロンプト6本
ここからは自社への移植手順です。従業員数10名から50名程度の不動産会社を想定しています。全社導入といっても、いきなり全業務に広げる必要はありません。順番は、棚卸し、日次共有の設置、業務3つの自動化、教育への展開、効果測定、横展開の6段階です。
使うツールは、ChatGPT、Claude、Geminiのいずれでも構いません。2026年8月時点の主要モデルは、OpenAIのGPT-5.6系、AnthropicのClaude Opus 5とSonnet 5、GoogleのGemini 3.1 Proと3.6 Flashです。すでにGoogle Workspaceを使っている会社ならGeminiが、Microsoft環境ならCopilotが、既存のアカウント管理に乗せやすい選択肢になります。モデルごとの向き不向きは不動産業務におけるAIモデル選定の比較で整理しました。
最初にやるのは業務の棚卸しです。ここを飛ばして「とりあえず配る」と、使い道を各自の判断に任せることになり、成果が測れません。
プロンプト1:非生産的業務の棚卸しと金額換算
あなたは中小不動産会社の業務改善を設計するコンサルタントです。
以下の情報から、人件費が消えている業務を金額換算で洗い出してください。
前提:
- 業態:{賃貸仲介 / 賃貸管理 / 売買仲介}
- 従業員数:{〇名}、平均時給換算:{〇〇円}
- 主要業務と月間発生件数:{業務名と件数を列挙}
- 1件あたりの所要時間:{分}
条件:
1. 業務ごとに「月間総工数」と「年間の人件費換算額」を算出
2. AIで代替しやすい順(定型度が高く判断が少ない順)に並べ替え
3. 各業務について、代替後に残る人の確認工程を1行で明示
4. 上位3業務について、着手の優先順位と理由
出力:業務一覧(工数・金額・代替難易度)→ 優先3業務と理由
次に、日次の共有の型を作ります。朝礼で共有する事例のフォーマットが決まっていないと、報告が「使ってみました」で終わります。
プロンプト2:朝礼で共有するAI活用事例のフォーマット設計
当社の朝礼で毎日1件、AI活用事例を共有する運用を始めます。
1分で話し終わり、聞いた人がその日に真似できるフォーマットを設計してください。
条件:
1. 話す項目は4つ以内(誰が・どの業務で・何を入力し・何分減ったか)
2. 数字を1つ以上入れる構成にする
3. 失敗事例も共有できるよう、うまくいかなかった場合の型も用意
4. 記録として残す際のテキスト書式(後で検索できる形)も提案
5. 3か月分の事例が溜まったときの整理方法
出力:発表フォーマット → 記入例3件 → 記録書式 → 整理方法
業務の自動化は、賃貸仲介なら物件紹介文から入るのが定石です。件数が多く、品質のばらつきが売上に直結します。
プロンプト3:賃貸物件の紹介文自動生成
以下の物件情報から、ポータルサイト掲載用の紹介文を3案作成してください。
物件情報:
- 物件名 / 所在地 / 最寄駅と徒歩分数:{値}
- 間取り / 専有面積 / 築年数 / 階数:{値}
- 賃料 / 共益費 / 敷金 / 礼金:{値}
- 設備:{列挙}
- 周辺環境:{列挙}
- 想定入居者層:{単身社会人 / 学生 / ファミリー}
条件:
1. 各案400字以内、冒頭50字で物件の特徴を言い切る
2. 事実として確認できない断定(日当たり良好など主観語)は使わない
3. 不当景品類及び不当表示防止法に触れる最大級表現を含めない
4. 設備の羅列ではなく、想定入居者の生活動線に沿って並べる
5. 各案の狙い(訴求軸)を1行で添える
出力:3案の本文と、それぞれの訴求軸
初期費用の算出は、金額ミスが信用に直結する業務です。計算そのものより、説明文の自動生成に効きます。
プロンプト4:初期費用の内訳と説明文の生成
以下の条件で初期費用の内訳表と、入居希望者向けの説明文を作成してください。
条件入力:
- 賃料 / 共益費:{値}
- 敷金 / 礼金:{〇か月}
- 仲介手数料:{賃料の〇か月+消費税}
- 火災保険料 / 鍵交換費用 / 保証委託料:{値}
- 入居予定日:{日付}(日割り計算あり)
条件:
1. 各項目の金額と算出根拠を1行ずつ示す
2. 日割り家賃は入居日から月末までの日数で計算し、計算式も明示
3. 合計額を最後に提示
4. 説明文は300字以内、専門用語には括弧で補足をつける
5. 金額に不明な項目がある場合は空欄とし、推測で埋めない
出力:内訳表を文章形式で → 合計 → 入居希望者向け説明文
教育への展開が、クラスコ事例の中核です。汎用AIでも、シナリオを作り込めばロープレは成立します。
プロンプト5:賃貸接客のAIロープレ シナリオ生成
あなたは賃貸物件を探している来店客を演じてください。
設定:
- 客層:{単身の20代社会人 / 転勤族のファミリー など}
- 希望条件:{エリア・賃料上限・間取り・入居時期}
- 隠している事情:{ペット飼育を後から言う / 予算が実は5千円低い など}
- 難易度:{初級・中級・上級}
進め方:
1. あなたは客として質問と反応だけを返し、解説はしない
2. 私(営業担当)の質問が浅い場合は、曖昧な答えを返す
3. 10往復したら会話を止め、以下の観点で評価する
- 条件のヒアリング漏れ
- 隠していた事情を引き出せたか
- 提案の根拠を示せていたか
- 宅建業法上、断定を避けるべき箇所で断定していないか
4. 評価は良かった点2つ、改善点3つの形式で
では、来店した場面から始めてください
最後が効果測定です。測れない改善は、翌年の予算が付きません。
プロンプト6:月次のAI活用効果の集計と共有資料化
以下の記録から、経営会議で使う月次レポートを作成してください。
入力データ:
- 業務別の削減時間記録:{業務名と時間}
- 利用者数と利用頻度:{値}
- 発生した費用:{ツール利用料など}
- 定性的な変化:{現場からの声を列挙}
条件:
1. 削減時間を人件費換算し、費用との差額を提示
2. 利用が定着した業務と、定着しなかった業務を分けて示す
3. 定着しなかった業務について、想定原因を2つずつ
4. 翌月に着手すべき業務を3つ、根拠つきで提案
5. 数値の前提(時給換算の単価など)を末尾に明記
出力:サマリー → 業務別実績 → 未定着の分析 → 翌月の提案 → 前提条件
つまずく3つのパターンと、その回避策
第一のパターンは、ツール導入を情報システム担当に丸投げする形です。AI活用は業務設計の話であり、システム選定の話ではありません。クラスコの事例で代表自身が判断の起点になっている点は、規模の大小を問わず参考になります。経営が「どの業務の工数を減らすか」を名指ししない限り、現場は日々の業務を優先します。
第二は、成功事例を共有する場を作らないまま配って終わるケースです。生成AIは、使い方を知っている人と知らない人で成果が10倍以上ばらつきます。ばらつきを埋めるのは研修ではなく、日常的な事例共有です。5,000社支援の中で何度も再現したパターンとして、社内チャットに事例を投げる習慣がある会社は半年後の利用率が明確に高くなります。
第三は、AIの出力をそのまま外に出してしまうケースです。物件紹介文は広告表示に該当し、不動産の表示に関する公正競争規約や景品表示法の制約を受けます。生成AIは「駅近で日当たり良好、理想の暮らしが叶う」といった主観的な訴求語を自然に混ぜてくるため、掲載前の確認工程を外すと表示上の問題を抱え込みます。プロンプトの条件に禁止表現を書き込み、そのうえで人が最終確認する二段構えにしてください。追客メールの文面設計でも同じ配慮が要ります。詳しくは不動産の追客メールをAIで設計する8シナリオで扱いました。
第四は、個人情報や機密情報の取り扱いルールを決めずに走り出すケースです。不動産会社は入居希望者の氏名、勤務先、年収、緊急連絡先といった情報を日常的に扱います。どのツールに何を入力してよいか、学習に使われない契約になっているか、退職者のアカウントをどう止めるかを、導入と同時に定めてください。ルールが後追いになると、いったん止めることになり、再開のハードルが上がります。
費用と工数の見積もり、そして測る指標
費用の目安を示します。生成AIの個人向け有料プランは月額20米ドル前後、Google Workspaceは1ユーザーあたり月額数百円から数千円の帯で、上位プランにGeminiの機能が含まれます。従業員30名で全員に配る場合、ツール費用だけなら年間で数十万円から百数十万円のレンジに収まります。クラスコが公表しているコスト削減額6,800万円と比べれば、ツール費用は誤差の範囲です。導入判断で本当に効くのは金額ではなく、使わせ切れるかどうかです。
工数は、初月に推進担当者の週5〜8時間程度を見ておくのが現場感覚に近い水準です。棚卸し、フォーマット設計、朝礼の運用開始、最初の3業務のプロンプト作成までが初月の範囲になります。2か月目以降は、朝礼での共有が回り始めるため、推進担当の負荷は週2時間前後まで下がるのが一般的な形です。
測る指標は4つで足ります。利用率(週1回以上使った社員の割合)、業務別の削減時間、削減時間の人件費換算額、そして定着した業務の数です。売上への貢献は遅れて効いてくるため、初期は利用率と削減時間を主指標に置くのが実務的です。クラスコが公表した売上2億円増という数字も、1年という期間があってのものです。
よくある誤りが、削減時間を積み上げただけで投資対効果を語ってしまうことです。浮いた時間が別の業務で埋まっただけなら、損益計算書には何も現れません。削減時間の集計と並べて、残業時間の推移、外注費の推移、1人あたり取扱件数の3つを見てください。この3つのどれかが動いていれば、削減が実際の経営数字に接続しています。どれも動いていなければ、浮いた時間の使い道が設計されていないという診断になります。
導入の初期に決めておきたいのが、成果報告の頻度と相手です。月次で経営会議に上げる形にしておくと、推進担当が孤立しません。逆に報告先が決まっていないと、現場の工夫が個人の中に閉じたままになり、全社の数字に育ちません。クラスコが毎朝の朝礼という場を選んだのも、報告のコストを極小にして頻度を上げるという設計だと読めます。
助成金の活用も検討に値します。同社は助成金5.8億円を獲得したと公表していますが、これは同社の規模と取り組み範囲によるもので、そのまま自社に当てはまる金額ではありません。適用可能な制度は年度と地域で変わるため、社会保険労務士や自治体の窓口で確認してください。
この事例から読み取るべき、本当の再現ポイント
競合記事の多くは「AIで売上2億円増」という見出しに集まりますが、再現性があるのは金額ではありません。移植できるのは、日次共有と月次共有の二層構造、自社ノウハウを教育に載せる発想、そして人件費の内訳から入る順番の3点です。この3つはツール非依存で、どのモデルを選んでも成立します。
逆に、そのまま真似しにくいのが62年分のノウハウという資産です。ここで多くの会社が「自社には蓄積がない」と諦めますが、蓄積は今日から作れます。商談の録音、成約に至った提案書、クレーム対応の顛末書。これらを構造化して溜め始めた会社は、3年後に他社が模倣できない教育素材を持ちます。AI活用の競争軸が、モデル選定から自社データの整備へ移りつつあるというのが、支援の現場で感じている変化です。物件情報を一括処理する実装の考え方はGemini 3.6 Flashによる物件情報の一括処理、業務全体のエージェント化はAIエージェントによる不動産業務の自動化でそれぞれ扱っています。
賃貸仲介と賃貸管理では、効きどころが少しずれる点も押さえておきたいところです。賃貸仲介は繁忙期の処理量がボトルネックになるため、紹介文・初期費用・追客といった件数の多い業務から入ると効果が早く出ます。一方の賃貸管理は、件数より判断の属人化が課題になりやすく、退去精算の査定基準や修繕の発注判断といった、担当者ごとにばらつく領域にAIを当てるほうが価値が出ます。同じ「AI全社導入」でも、部門ごとに測る指標を変えるべきだというのが、支援の現場で得た実感です。
規模別に見ると、従業員10名以下では推進担当を専任にできないため、朝礼共有と業務2つの自動化に絞るのが現実的です。30名前後になると部署間の壁が生まれるので、月次の横断共有が効いてきます。50名を超える規模では、部署ごとに推進役を置いて、日次は部署内、月次は全社という二層に分けるのが運用しやすい形になります。クラスコの仕組みは、この二層構造をそのまま体現しています。
もうひとつの論点が、人員配置です。22,862時間が浮いたとして、その時間をどこに再配置するかで結果が変わります。削減だけを目的にすると、余った時間が自然に消えます。クラスコが売上増も同時に実現しているのは、浮いた時間を営業活動へ振り向けたからだと読むのが自然です。工数削減と売上向上をセットで設計できるかどうかが、1年後の景色を分けます。
よくある質問
従業員10名の会社でも同じことができますか
はい、規模が小さいほど定着は速く進みます。朝礼での事例共有は人数が少ないほど全員に届きやすく、意思決定も早いためです。ただし推進を担当する人を1名は明示的に決めてください。全員の兼務にすると、日常業務が優先されて止まります。
どのAIを選べばよいですか
現在使っているグループウェアに合わせるのが最も摩擦が少ない選び方です。Google Workspaceを使っているならGemini、Microsoft 365ならCopilotが、アカウント管理と権限設計をそのまま流用できます。特定の業務で精度を追いたい場合は、ChatGPTやClaudeを併用する形も現実的です。
売上2億円増という数字は自社でも期待できますか
同社の公表値であり、規模と業態が異なる会社にそのまま当てはまるものではありません。参考にすべきは金額ではなく、人件費の8割が非生産的業務に消えていたという出発点の分析です。自社で同じ棚卸しをすると、削減余地の実額が見えます。
現場が使ってくれない場合はどうすればよいですか
使わない理由の多くは、抵抗感ではなく「自分の業務で何に使えるか分からない」ことです。抽象的な研修ではなく、その人の担当業務のプロンプトを一緒に1本作るところから始めてください。1本動くと、次は自分で作り始めます。
個人情報を入力しても問題ありませんか
契約形態によります。法人向けプランでは入力データを学習に使わない設定が用意されている場合が多いものの、条件は提供元と契約内容で異なります。入居希望者の氏名や年収を扱う前に、契約書とプライバシーポリシーを確認し、社内ルールを文書化してください。判断に迷う場合は個人情報保護の専門家に相談する前提で進めるのが安全です。
効果はいつごろ出ますか
利用率と削減時間は1〜2か月で動き始めます。売上への反映は、営業活動の増加が成約に変わるまでの期間を挟むため、半年から1年を見ておくのが現実的です。初期に売上指標だけを追うと、成果が出ていないように見えて止めてしまう危険があります。
AIロープレは自社で作れますか
作れます。汎用の生成AIに客の役を演じさせ、評価観点を指定すれば基本形は成立します。精度を上げたい場合は、実際の商談記録や想定問答を学習素材として渡す形に発展させてください。専用システムの検討は、汎用AIで運用が回り始めてからで遅くありません。
参考文献
- PR TIMES|【クラスコ】AI導入1年で、売上2億円増・業務効率22,862時間・コスト6,800万円削減を実現
- 全国賃貸住宅新聞|クラスコ・ホールディングス、1年で12人分の業務削減効果
- PR TIMES|クラスコの教育システム「AIロープレ」
- 株式会社クラスコ 公式サイト
著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/宅建業免許 東京都知事(1)第113520号/AI導入支援100社超/EC支援19年5,000社超のノウハウを不動産×AIに横展開)
※不動産のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社の不動産事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://fudosannochikara.jp/contact/
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)