AI議事録Circlebackが無料化|不動産の商談記録で押さえる3論点

AI議事録Circlebackが無料プランを新設。0ドルで会議数無制限、ただし履歴は30日。不動産の商談記録に使う際の保存期間・個人情報・コストの3論点を、宅建業免許を持つオルセルが解説します。

会議テーブルを囲む経営メンバー

AI議事録サービスのCirclebackが、無料プランを新設しました。

これまで試用期間だけを入口にしていたサービスが、無期限で使える0ドルの入口を持ったという話です。無料プランでも会議の本数に上限はなく、話者を識別した文字起こしとアクションアイテムの自動抽出まで使えます。一方で履歴は30日で消えます。この「無料だが30日」という設計が、内見同行やオーナー面談の記録を扱う不動産事業者にとって何を意味するのか。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が、価格・保存期間・個人情報の3点から整理します。

Circlebackの公式サイトイメージ

無料プランで何ができて、何ができないのか

結論から言うと、無料プランでも議事録の中核機能はほぼ揃います。Circlebackの料金ページによると、0ドルのFreeプランに含まれるのは、AIによる議事録とアクションアイテムの自動生成、会議内容に質問できる「Ask Circleback」、オンライン会議と対面会議の両方への対応、会議に参加するボット方式とボットを入れないデスクトップアプリ方式の選択、話者ラベル付きの文字起こし、自動タグ付けと共有、そしてSlackとLinearとの連携です。スマートフォンとApple Watchのアプリも無料の範囲に入っており、対面での商談をその場で録るという使い方が課金なしで試せます。

差が出るのは、保存期間と外部連携の深さです。無料プランの会議・録音履歴は30日、チームは2つまで、APIやMCP、CLI、自動化は制限付きという扱いになっています。1ユーザーあたり月15ドルのProプランに上げると履歴が無期限になり、録音の保管が1年、NotionやHubSpot、Salesforce、Attioを含む全連携と、API・MCP・CLIのフル利用が開放されます。さらにBusinessが月25ドルで管理者権限や2年の録音保管、Enterpriseが月35ドルでシングルサインオンとHIPAA対応という段構えです。公式サイトでは100言語超の文字起こしに対応し、SOC 2とGDPR、EU-US DPFへの準拠を掲げています。顧客ロゴには不動産サービス大手のCBREも並んでいます。

つまり今回の変更は、機能を削って無料にしたのではなく、保存期間と連携という「業務に本気で組み込む部分」だけを有料に残した設計です。使い勝手を試す段階での金銭的な障壁は、実質ゼロになりました。

不動産事業者が押さえるべき3つの論点

第一に、30日という保存期間は不動産の商談サイクルと噛み合いません。売買仲介で媒介契約から決済までが3か月前後、投資物件や相続案件ならさらに長引くのが普通です。無料プランのまま運用すると、契約直前になって「3か月前のオーナー面談で何を約束したか」を確認しようとしたときに、記録がすでに消えているという事態が起きます。宅地建物取引業法49条は業務に関する帳簿の備付けと、各事業年度末に閉鎖したうえで5年間(自ら売主となる新築住宅は10年間)の保存を求めています。商談の議事録そのものはこの法定帳簿とは別物ですが、後日の言った言わないを避ける証拠としての価値を考えれば、30日は明らかに短い。保存期間の細目は同法施行規則で確認したうえで、自社の記録保存ルールに合わせて有料プランを選ぶか、議事録を自社ストレージへ書き出す運用を組むかを先に決めるべきです。

第二に、録音の同意と個人情報の取り扱いです。入居希望者やオーナーとの会話には、氏名、勤務先、年収、家族構成といった個人情報が濃く含まれます。AI議事録サービスを使うことは、個人情報の取扱いを外部事業者に委託する行為にあたるため、個人情報保護法上の委託先の監督義務が発生します。無料だからと現場が個人アカウントで勝手に導入すると、会社として委託先を把握できていない状態が生まれます。録音の開始前に相手方へ告知して同意を得ること、利用するサービスを会社として一本化すること、この2点は無料化のタイミングだからこそ先に固めておきたいところです。

第三に、コスト構造の見え方が変わります。これまでは「AI議事録は月数千円かかるから、まず1人で試す」という判断でしたが、無料で人数を増やせるようになると、営業全員に配って走らせるという選択が現実的になります。仮に営業10名で本格運用に移る場合、Proプランなら月150ドル、年間で1,800ドル規模です。この金額を、賃貸仲介1件の仲介手数料や、売買1件の追客漏れが生む機会損失と比べてどう見るか。無料プランは、その判断材料を実データで集めるための期間として使うのが合理的です。

明日からの初動として何をするか

まずは、記録を残したい会議を3種類に絞って試すことをおすすめします。オーナーとの管理受託・更新の面談、売買の媒介契約前のヒアリング、そして社内の物件検討会です。この3つは後から内容を参照する頻度が高く、議事録の効果が数字で見えやすい領域です。

次に、30日以内に必ず外へ出す運用を決めます。生成された議事録を自社の顧客管理システムや共有ドライブへ転記する担当と締切を決めておけば、無料プランのまま検証を続けられます。無料プランでもSlack連携が使えるので、会議直後に要約をチャンネルへ流し、そこから社内の記録先へ回す導線が組めます。

最後に、30日から60日の検証を終えた時点で、有料化するかどうかを数字で判断します。見るべきは、議事録作成に使っていた時間の削減幅と、追客の抜け漏れがどれだけ減ったかの2点です。AI議事録は導入それ自体が目的になりやすい領域なので、「何分減ったか」「何件拾えたか」を先に定義しておくと投資判断がぶれません。なお日本語の文字起こし精度は録音環境に大きく左右されるため、実際の商談音声で自社検証してから展開規模を決めてください。

音声からの記録化そのものの精度は、Gemini 3.5 Transcribeの多言語文字起こしでも取り上げたとおり、この1年で大きく前進しています。あわせて、AIツールに顧客情報を預ける際の考え方は共有セッション機能と顧客情報の扱いにも整理していますので、社内ルールを作る際の参考にしてください。

まとめ

AI議事録の無料化は、不動産の現場にとって「試す理由がなくなった」という意味を持ちます。ただし無料プランの履歴は30日で消え、顧客情報を外部に預ける以上は委託先管理の責任も残ります。0ドルで試し、30日以内に記録を自社へ逃がし、削減時間と追客改善を数字で確認してから有料化する。この順番であれば、無料化の恩恵だけを取りにいけます。

参考文献

※不動産のチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社の不動産事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://fudosannochikara.jp/contact/

引用元: TechCrunch


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)