従業員のAI言及は前年比240%増え、好意的な声は43%まで落ちました。
米国の企業口コミサイト Glassdoor が2026年6月に公開した調査で、社員レビュー内のAI言及が前年同月比240%増加し、好意的な言及の比率が2025年の55%から2026年には43%へ逆転したことが明らかになりました。AIを入れること自体ではなく、入れ方が現場の不満を生んでいるという指摘です。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)が、日本の不動産事業者の視点で解説します。

Glassdoor調査で何が起きたか:AI言及240%増、好意的43%へ逆転
結論から言えば、AIへの社員の目線は2026年に入って明確に負に振れました。Glassdoor の Worklife Trends 2026 中間レビューによると、米国の現従業員による640万件のレビューを分析した結果、AI・LLM・ChatGPT といったキーワードへの言及率は2026年5月時点で前年同月比240%増となりました。同時期のインフレ関連言及の増加が34%、バーンアウト関連が43%であることを踏まえると、AIは職場の話題として突出した位置に上がっています。
注目すべきは、増えた言及の中身です。2025年時点ではAIに触れたレビューの55%が好意的(Pros欄での言及)、41%が否定的でしたが、2026年にはこれが反転し、否定的が53%、好意的が43%になりました。Glassdoor は、経営層が社員にAI利用を求める一方で、同じAIを人員削減や採用抑制の理由として掲げていることが不信を生んでいると分析しています。
一方で、同調査は「AIに強くさらされている職種で満足度が有意に下がった証拠はない」とも述べています。翻訳者や事務アシスタント、Web開発者といった代替リスクが高いとされる職種でも、総合評価やキャリア機会の評価に統計的に有意な差は確認できませんでした。つまり現時点の不満は、実際に仕事を奪われた結果ではなく、AIをめぐる社内の進め方そのものに向いていると読めます。
日本の不動産事業者にとっての論点:現場が離れる3条件
この調査結果は米国データですが、日本の不動産会社が社内AI導入で失敗するパターンをかなり正確に説明しています。現場が離れる条件は3つに整理できます。
第一に、経営が使用を義務づける一方で教育を用意しないことです。Glassdoor 調査でも、AI利用を求められた社員のうち十分な研修を受けていない層が不満の中心にいると読める構図が示されています。賃貸仲介の営業担当に「追客メールはAIで書け」と指示だけ出し、プロンプトの型も禁止事項も渡さなければ、担当者は生成結果の手直しに時間を取られ、結果として作業が増えたと感じます。
第二に、AI導入と人員削減を同じ文脈で語ってしまうことです。「AIを入れるので業務を効率化する」という説明が、社員には「人を減らす前振り」として受け取られます。Glassdoor はレビュー内で、経営層との不整合を示す語(misalignment)の言及が前年比95%増、断絶(disconnect)が52%増、不信(distrust)が18%増になったと報告しています。上級管理職への評価は2026年4月に平均3.5を下回り、2017年以降で最悪の月となりました。
第三に、責任の所在を決めないまま現場に投げることです。不動産業では、AIが作った文言の責任が誰にあるかが法的に重い意味を持ちます。AI査定の数値をそのまま顧客提示すれば、断定的判断の提供として宅地建物取引業法上の問題になりかねませんし、物件紹介文の誇大表現は景品表示法や不動産の表示に関する公正競争規約に触れます。最終確認は宅地建物取引士が行うという線引きを明示しないまま導入すると、現場は「事故ったら自分の責任」と受け止め、使わなくなります。
初動アクション:定着させるために先に決める4つのこと
まず、AI利用を評価制度から切り離すことです。利用回数や利用率をKPIにすると、社員は評価のために使うようになり、Glassdoor が捉えた「強制されている」という不満とまったく同じ構造が生まれます。当面は義務化せず、成果物の品質と処理時間だけを見る運用が現実的です。
次に、業務ごとに使ってよい範囲を文書化します。追客メールの下書き、物件写真のキャプション案、レインズや自社顧客管理のデータ集計といった「下書き・整理」用途はAIに任せ、重要事項説明の内容判断、価格の最終決定、契約条項の確定は人が行うと明記します。宅地建物取引業法は2022年5月18日の改正で重要事項説明書等の電磁的方法による提供を可能にしましたが(全日本不動産協会)、記名する宅地建物取引士の責任が消えたわけではありません。手段が電子化しても、判断の主体は人のままです。
三つ目に、個人情報の投入ルールを先に決めます。入居申込者の氏名・住所・勤務先などを外部の生成AIサービスにそのまま入力する運用は、個人情報保護法上の第三者提供や利用目的の観点で整理が必要です。学習に使われない契約形態のサービスを選ぶか、氏名や住所を伏せてから投入する手順を標準化してください。
四つ目に、月1回でよいので現場からの不満を集める場を作ることです。Glassdoor の数字が示しているのは、社員はAIそのものではなく「自分たちの声を聞かずに進める経営」に反発しているという構図です。導入から3か月で使われなくなった機能を棚卸しし、やめる判断を経営が明示するだけでも、不信の蓄積はかなり抑えられます。
まとめ
AIへの社員の評価が好意的43%まで落ちた原因は、技術ではなく導入の設計にあります。日本の不動産会社が社内AIを定着させるには、利用を義務づけない、使ってよい業務範囲を文書化する、個人情報の扱いを先に決める、現場の声を回収する、の4点を初動で押さえることが有効です。宅地建物取引業法と個人情報保護法の線引きを最初に引いておけば、現場は安心して使い始められます。
参考文献
- Glassdoor Economic Research|Glassdoor Worklife Trends 2026: Midyear Check-in
- Glassdoor|How workers feel about AI in 2026
- the decoder|AI sentiment is turning sour as employee reviews reveal growing frustration across the workforce
- 全日本不動産協会|重要事項説明の電磁的方法による提供、およびIT重説
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引用元: Glassdoor Economic Research
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / EC支援19年5,000社超・AIコンサル100社超 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)