Claude Codeで不動産テック開発を内製化するコスト|外注との比較と向き不向きの線引き

Claude Codeで不動産テック開発を内製化するコスト|外注との比較と向き不向きの線引き

Claude Codeとは、Anthropicが提供するAI開発支援ツールのことです。

不動産会社が「自社ツールを内製する」と言い出したとき、経営が最初に確認すべきは開発費ではなく、5年後に誰が保守するかです。AI支援で開発の生産性が上がった結果、以前なら外注していた規模のツールが社内で作れるようになりました。ポータル掲載情報と自社マスタの突き合わせ、退去精算の計算補助、物件写真の一括リサイズ。この規模のツールなら、社内に1名でも技術に触れる人がいれば数日で形になります。ただし、作れることと持ち続けられることは別問題でした。本記事は、宅建業免許(東京都知事(1)第113520号)を保有し、AI導入コンサル100社超の実績を持つ株式会社オルセル(不動産のチカラ運営)の知見をもとに、内製化の費用構造と、外注すべき境界線を整理します。

内製できる範囲が2026年に広がった理由

広がった理由は、コードを書く工程の生産性が上がったことです。設計と検証の工程は変わっていません。ここを混同すると、見積もりが大きく外れます。

Claude Codeは、Anthropicが提供する開発支援の環境で、ターミナル、デスクトップアプリ、ブラウザ、IDEの拡張機能から利用できます。指示を自然言語で与えると、ファイルの読み書き、コードの実行、テストの実施までを一連の流れで進めます。従来のコード補完と違うのは、複数のファイルにまたがる変更や、エラーを見て自分で直す動きまで含まれる点でした。

不動産業務で内製する対象は、多くが小規模なツールです。数百行から数千行、外部との連携は自社システムとファイル、利用者は社内の数名から数十名。この規模なら、経験の浅い担当者でもAI支援があれば形にできます。現場で繰り返し見るのは、情報システム担当が1名しかいない会社で、その1名の手が届く範囲が明らかに広がっている状況でした。

一方、生産性が上がっていない工程もあります。何を作るべきかを決める工程、業務ルールを整理する工程、動いたものが業務に耐えるかを検証する工程。これらは人が判断するしかなく、AIの支援を受けても短縮幅は小さい。内製の見積もりでコードを書く時間だけを数えると、実際の3分の1程度の数字が出ます。

費用面では、Claude ProやMaxのようなサブスクリプションにClaude Codeの利用が含まれる形になっており、開発ツールの費用そのものは月額20米ドルから100米ドル程度(2026年8月時点、プランと為替により変動するため要確認)の範囲に収まります。開発の人件費に比べれば、無視できる水準です。

不動産会社が内製で作っているもの

内製の対象は、自社固有の業務に密着したツールに集中します。汎用的な機能は既製品のほうが安く、品質も安定していました。

最も多いのが、データの突き合わせツールです。ポータルサイトに掲載中の情報と自社マスタを比較し、賃料の食い違いや成約済み物件の掲載残りを検出する。この処理は各社の物件マスタの構造に依存するため、既製品では対応しきれません。週次で回すだけの単純なツールですが、掲載ミスによる問い合わせ対応の手間を減らす効果があります。

次いで、集計と可視化のツールです。反響数、内見数、成約数を店舗別・媒体別に集計し、月次のレポートを作る。表計算ソフトで手作業していた集計を自動化するもので、作るのは難しくありません。ただし、集計の定義を社内で固めないまま作ると、後から「この数字は何を数えているのか」で揉めます。

3つ目が、書類作成の補助ツールです。契約書のひな型に顧客情報と物件情報を差し込む、重要事項説明書の下書きを作る、精算書の計算を行う。この領域は業務システムの機能と重なるため、既存システムでできることを内製し直していないかの確認が要ります。

4つ目が、AIとの接続部分です。前述のMCPサーバーのように、自社データをAIから呼べる形にする窓口。この部分は自社システムの構造を知らないと作れないため、内製が向く典型でした。詳しくはMCPで不動産テックの業務システムを接続する記事で整理しています。

逆に、内製に向かないものを挙げます。電子契約、入居者向けアプリ、会計連携、決済処理。これらは法令対応が伴い、制度変更のたびに追随する負担が発生します。加えて、セキュリティの要求水準が高く、自社で担保しきれません。この領域は既製品を選ぶべきでした。

内製と外注の費用を比べる

比較すべきは初期費用ではなく、5年間の総額です。初期だけを見ると内製が圧倒的に安く見えますが、保守と引き継ぎのコストが後から乗ります。

内製の初期費用は、人件費が中心です。社内の担当者が週2日、1か月かけて作るツールなら、人件費換算でおおむね40万円から60万円。AI支援の利用料は月数千円から1万円台で、誤差の範囲に収まります。外注した場合、同規模のツールで100万円から300万円という見積もりが一般的でした。初期だけを見れば、内製が3分の1から5分の1です。

問題は、その後です。内製したツールは、作った担当者しか中身を知りません。その担当者が異動または退職したとき、誰も触れないツールが業務に組み込まれた状態が残ります。不動産×AI導入コンサルの現場で繰り返し確認したパターンとして、この「動いているが誰も直せないツール」が3年から5年で問題化する構図がありました。外注であれば、保守契約という形で継続的な費用は発生しますが、担当者の異動で止まることはありません。

現実的な解として現場で採られているのが、ハイブリッドの構成です。内製で作るが、設計書と運用手順書を人に依存しない形で残し、コードを社内の共有リポジトリで管理する。加えて、外部の開発者と保守の相談ができる関係を作っておく。この3点を満たしていれば、内製のリスクはかなり下がります。

判断の目安を示すと、業務の中核に関わるツールは外注または既製品、業務の周辺を支えるツールは内製、という切り分けが安全でした。物件マスタそのものを内製で置き換えるのは危険ですが、物件マスタから出力したデータを加工するツールなら内製で問題ありません。

もう1つの目安が、そのツールが止まったときの影響です。止まっても手作業で代替できるなら内製、止まると業務が止まるなら外注または既製品。この基準で仕分けると、判断が速くなります。

内製を始めるときの手順

手順は、対象の選定、環境の整備、小さく作る、記録を残す、の4段階です。

第1段階の対象選定では、まず「手作業でやっている定型処理」を5つ挙げてください。そのうち、月間の作業時間が長く、止まっても手作業で代替できるものが最初の1本に向きます。突き合わせや集計の処理が該当しやすい領域でした。逆に、顧客に直接影響する処理や、金銭の計算に関わる処理は最初に選ばないでください。

第2段階の環境整備では、コードを置く場所と、実行する場所を決めます。個人のパソコンだけで動かす構成は避けてください。担当者が不在のときに実行できず、パソコンが壊れると失われます。社内のサーバーか、クラウド上の環境に置くのが前提です。あわせて、コードのバージョン管理を導入してください。この2点を最初に整えておかないと、後から移行する作業が発生します。

第3段階は、小さく作ることです。最初から全機能を目指さず、1つの処理だけを動かす。動いたら次の処理を足す。この進め方だと、途中で方針が変わっても損失が小さく済みます。以下は、内製の対象を検討するときに使えるプロンプトです。

プロンプト1:内製候補の仕分け

あなたは不動産会社のシステム導入を支援するコンサルタントです。以下の業務について、内製・外注・既製品のどれが適しているかを判定してください。

判定の観点:
1. その業務が自社固有か、業界共通か
2. 法令対応や制度変更への追随が必要か
3. 扱うデータに個人情報や金銭情報が含まれるか
4. ツールが止まったときに手作業で代替できるか
5. 想定される利用者数と利用頻度

出力:
業務名/推奨(内製/外注/既製品)/理由/内製する場合のリスク/想定工数の目安

制約:
- 電子契約、決済、会計連携、入居者向けアプリは「既製品」と判定すること
- 個人情報を扱う処理は、内製する場合のリスクを具体的に記載すること
- 工数は幅で示し、断定しないこと

業務一覧:
{手作業でやっている定型処理を列挙。作業時間と頻度を添える}

第4段階が、記録を残すことです。何のために作ったか、どういう仕組みで動いているか、止まったときに何を確認すべきか。この3点を文書にしておいてください。担当者の頭の中にしかない状態が、内製の最大のリスクです。以下のプロンプトで、コードから説明文書を起こせます。

プロンプト2:内製ツールの引き継ぎ文書の作成

以下のコードについて、技術者ではない後任者にも読める引き継ぎ文書を作成してください。

出力する項目:
1. このツールが解決している業務上の問題(3行)
2. 入力と出力(どのファイルを読み、何を出すか)
3. 実行のタイミングと方法
4. 動かなくなったときの確認手順(上から順に3つ)
5. 変更してはいけない箇所と、その理由
6. 外部サービスへの依存(あれば、その名称と用途)

制約:
- 専門用語には1行の説明を添えること
- コードの内容ではなく、業務上の意味を中心に書くこと
- 想定外の入力が来たときの挙動を明記すること

コード:
{貼り付け}

3か月で1本目を出す進め方

期間の目安は3か月です。最初の1本にこの程度をかけると、2本目以降が速くなります。

最初の1か月は、対象の選定と業務の整理に充てます。作りたいものを決める前に、その業務を紙に書き出してください。入力は何か、どういう判断があるか、出力は誰が何に使うか。この整理をせずにコードを書き始めると、途中で「そもそも何を作るんだったか」に戻ります。整理の過程で「これは作らなくてよい」と気づく業務も出てきます。それも成果でした。

2か月目が、試作です。1つの処理だけを動かし、実際のデータで試す。この段階では見た目を作り込まず、動くかどうかだけを見てください。試作の段階で本番データを使う場合、個人情報の扱いに注意が要ります。テスト用に匿名化したデータを用意しておくと、この先の作業が楽になりました。

3か月目は、運用に載せる工程です。実行する場所を決め、失敗したときに気づける仕組みを入れ、引き継ぎ文書を書く。この工程を省いて「動いたので完成」とすると、半年後に誰も触れないツールになります。失敗の通知は、メールかチャットに1行飛ばすだけで足ります。静かに止まっているのが、最も困る状態でした。

3か月を終えた時点で持っているべきものは、動くツールと、引き継ぎ文書と、業務が整理された資料の3点です。3点目が、実は最も価値があります。業務の棚卸しは、内製をしない場合でも役に立つ資産でした。

社内の合意についても触れておきます。内製に対して「本業ではない」という声が出ることがあります。この指摘は正しく、内製が目的化すると本業の時間を削ります。判断の基準は、そのツールが業務時間を何時間減らすか。月20時間を下回るなら、内製する価値は薄いと考えてください。

内製で起きる4つの失敗

1つ目が、属人化です。作った担当者以外が触れない状態を放置すると、その担当者が休んだだけで業務が止まります。回避策は、コードを社内で共有し、引き継ぎ文書を作ることでした。作った直後に文書を書く。後回しにすると、書かれません。

2つ目が、範囲の膨張です。小さく作り始めたツールに機能を足し続け、いつの間にか業務システムのような規模になっている。この状態になると、保守の負担が個人の手に負えなくなります。機能を足す前に「これは既製品でできないか」を確認する習慣を持ってください。

3つ目が、セキュリティの見落としです。顧客情報を扱うツールを、誰でもアクセスできる場所に置いてしまう。個人情報を含むファイルを暗号化せずにクラウドへ置いてしまう。個人情報保護委員会が示す安全管理措置の考え方に沿って、アクセス制御と保管方法を先に決めてください。内製だからこそ、この部分の設計が抜けやすい。

4つ目が、業務システムとの二重管理です。内製ツールで加工したデータが、業務システムの数字と食い違う。どちらが正しいかが分からなくなり、両方を確認する手間が発生する。回避策は、内製ツールを「読むだけ」に留めることでした。業務システムへ書き戻す処理を作ると、整合性の管理が一気に難しくなります。

現場感覚では、この4つのうち1つ目と4つ目が特に多い。技術的な難しさではなく、運用設計の問題として起きています。

費用の全体像と、判断の分岐点

内製の費用は、初期の人件費、AI支援ツールの利用料、実行環境の費用、そして保守の人件費で構成されます。小規模なツール1本なら、初期に40万円から60万円、月額の運用に数千円から1万円台、年間の保守に5万円から10万円という規模感です。

対して外注は、初期に100万円から300万円、保守契約が年間で初期費用の10%から20%という構造が一般的でした。5年間の総額で比べると、内製が70万円から110万円、外注が150万円から500万円という計算になります。数字だけ見れば内製が有利ですが、この計算には担当者の異動リスクが織り込まれていません。

判断の分岐点を整理します。ツールが止まっても手作業で代替でき、扱うデータに金銭や個人情報が含まれず、自社固有の業務に密着している。この3条件が揃うなら内製が合理的でした。1つでも外れるなら、外注か既製品を検討してください。

もう1つ、社内の人材について触れておきます。AI支援で開発の敷居が下がったとはいえ、コードが何をしているかを読める人が社内に1名は要ります。この1名がいない会社が内製に踏み込むと、動いているかどうかも判断できない状態になる。まずは1名を育てるところから、という順序が現実的でした。

内製の広がりが、不動産テック市場に与える影響

影響が出るのは、小規模なツールを提供している事業者でした。突き合わせ、集計、データ整形といった単機能の製品は、内製の対象と重なります。この領域の製品は、価格か、業界固有のノウハウの深さで差別化する必要が出てきます。

逆に、法令対応と制度変更への追随が要る領域は、内製の脅威を受けにくい。電子契約、会計連携、入居者向けサービス。この領域の製品を持つ事業者は、むしろ内製が広がるほど「作らずに買う」判断が明確になり、位置づけが強くなる可能性があります。

不動産会社側から見ると、内製の広がりは選択肢の増加を意味します。これまで「既製品にないから諦める」だった業務改善が、「作る」という選択肢を持てるようになった。ただし、作れるようになったことと、作るべきことは別です。推測を含む見立てとして、2027年に向けて差がつくのは、作る技術ではなく、作らない判断ができるかどうかだと考えています。

よくある質問

Claude Codeとは何ですか

Claude Codeとは、Anthropicが提供するAI開発支援の環境のことです。ターミナル、デスクトップアプリ、ブラウザ、IDEの拡張機能から利用でき、自然言語の指示でファイルの読み書きやコードの実行を進めます。Claude ProやMaxのサブスクリプションに利用が含まれています。

技術者がいなくても内製できますか

いいえ、コードが何をしているかを読める人が社内に1名は必要です。AI支援で書く工程は速くなりましたが、動いているものが業務に耐えるかを判断する工程は人が担います。まず1名を育てるところから始めるのが現実的でした。

内製と外注ではどちらが安いですか

初期費用は内製が3分の1から5分の1程度ですが、5年間の総額では担当者の異動リスクを織り込む必要があります。ツールが止まっても手作業で代替でき、金銭や個人情報を扱わず、自社固有の業務に密着している場合に限り、内製が合理的でした。

最初に何を作るべきですか

手作業でやっている定型処理のうち、月間の作業時間が長く、止まっても手作業で代替できるものを選んでください。ポータル掲載情報と自社マスタの突き合わせや、月次の集計処理が該当しやすい領域です。顧客に直接影響する処理は最初に選ばないでください。

属人化を防ぐにはどうすればいいですか

コードを社内の共有リポジトリで管理し、引き継ぎ文書を作った直後に書くことです。文書には、業務上の目的、入出力、実行方法、止まったときの確認手順、変更してはいけない箇所を含めてください。後回しにすると書かれません。

個人情報を扱うツールを内製しても大丈夫ですか

扱えますが、アクセス制御と保管方法の設計を先に決めてください。個人情報保護法が求める安全管理措置の考え方に沿って、誰がアクセスできるか、暗号化するか、保存期間はどうするかを文書にしておく必要があります。内製だからこそ、この設計が抜けやすい領域でした。

開発ツールの費用はいくらですか

Claude ProやMaxのサブスクリプションに利用が含まれる形で、月額20米ドルから100米ドル程度の範囲です(2026年8月時点、プランと為替により変動するため要確認)。開発の人件費に比べれば、費用として無視できる水準に収まります。

参考文献

不動産テックの動向は不動産テックカテゴリにまとめています。業務エージェントの構築についてはClaude Sonnet 5で業務エージェントを構築する記事もあわせてご覧ください。


著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/EC支援19年5,000社超/AIコンサル100社超/宅建業免許 東京都知事(1)第113520号)


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【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 宅建業免許 東京都知事(1)第113520号 / AI導入コンサル100社超)